「理系に進みたいけど数Ⅲが難しいってよく聞くから不安」
「数Ⅲって実際どれくらい難しいの?」
この記事を読む人の中には、このような疑問を持つ方が多くいるでしょう。
「数Ⅲは難しい・大変」とよく言われますが、将来やりたいことがあって理系に進みたい人が、それを理由に理系を諦めてしまうのももったいないですよね。
なんとなくのイメージで数Ⅲは難しいと考えるのではなく、数Ⅲの難しさがどの程度なのか、難しいと言われる要因は何なのかをよく知ることが大切です。
そこで今回は、数Ⅲの各分野の特徴、難しいと言われる理由、数Ⅲの勉強に向けてやるべきことについて、現役京大生の私が解説します。
数Ⅲってどんな科目?
まずは数Ⅲがどんな科目かについて解説します。
高校数学の集大成
数Ⅲは、主に理系の生徒が、高校数学で最後に学ぶ科目です。
数学ⅠAⅡBで習った内容を活かしつつ、より高度で複雑なことを学びます。高校数学の集大成となる科目です。
どんな分野があるかについては、後述します。
理系の2次試験数学では必須
大学入試において、数Ⅲは基本的に理系の入試で必要となります。
数Ⅲを入試で課さない一部の大学や学部を除き、難関大学の2次試験ではほぼ必ず出題されます。大学によっては、理系数学の問題の半分以上が数Ⅲから出題された年もあるほどです。
そのため、理系の生徒は数Ⅲが苦手だと、それがかなり足を引っ張ってしまうでしょう。
数Ⅲにはどんな分野があるの?
ここからは、数Ⅲの各分野の特徴について見ていきます。
2022年4月に高校1年生になった学年から新課程となり、今から紹介する分野の一部が数学Cに移動していますが、それらの分野も基本的に理系のみで出題されます。
そのためこの記事では、数学Cに移動した分野に関しても、「理系のみがやる数学」として、数Ⅲとともに扱います。
各分野の特徴や詳しい勉強法などについては、以下の記事で解説されているので、合わせてご覧ください。
▶数Ⅲの単元って何があるの?京大生が単元別の勉強法や参考書を紹介
複素数平面
数Ⅱで勉強した複素数をさらに発展させた分野です。
複素数を実部と虚部にわけ、座標平面上に図示します。虚数が出てきて、新たな概念や考え方も増えるので、理解が難しい分野です。
これまでに座標平面上で行ってきたことを応用させたり、ベクトルの考え方を用いることを学びます。
今までベクトルや幾何で解いていた問題が複素数平面の考え方でも解けるという場合もあります。
数Ⅲの中では入試に頻出な分野の1つです。
2022年度からの新課程で数学Cに含まれることになりましたが、2次試験では理系のみの範囲です。
式と曲線
数Ⅱの図形と方程式では、円などを扱いましたが、この単元ではそれをさらに発展させ、楕円や双曲線について学びます。
この単元のみで2次試験に出題されることは少ないですが、微分や積分、軌跡などとの融合問題として出題されることがあります。
「曲線の媒介変数表示」や「焦点と距離の関係」など、新たな定義や概念、性質が増える単元です。覚えることも多く計算も厄介で、私自身の受験生時代を振り返ると、正直嫌いな単元でした。
この単元も、2022年度からの新課程で数Cに含まれています。
関数と極限
「関数」では、無理関数や分数関数など、いくつか新たな関数を学びます。
式だけを丸暗記するのではなく、グラフの形をイメージできるようになるくらいにしておくと、関数の性質の理解も深まるでしょう。
また、逆関数や合成関数といった新たな考え方も登場します。
「極限」では、関数において、ある変数を限りなく0に近づけたり、無限に大きくしたときに値がどうなるかを考えます。
例えば、「5x+1」という式で、xを限りなく0に近づけていくと、値は限りなく1に近づいていきます。
関数も極限も単体での出題は稀ですが、微分や積分などとの融合で出題されます。特に極限は、確率や数列との融合問題が頻出です。
記述式の問題では厳密な議論が求められる単元なので、単に公式を覚えるだけでなく、導き方や性質をしっかり理解しましょう。
微分法
数Ⅱの微分では、3次関数までの整式のみを扱いましたが、数Ⅲでは、三角関数や指数関数など、今までに登場したあらゆる関数を微分します。
そのため、大前提として、今までに学習した関数の性質などについて十分な理解が必要です。
また、様々な関数を微分するので、新たに覚える公式がたくさんあります。微分を利用して増減や変曲点を知り、グラフを描くことも多いです。
関数の大小比較の問題や積分などでグラフを利用して解くケースも多いので、微分の計算をしてグラフの概形を掴むスピードを上げましょう。
積分法
数Ⅲの最後の分野が積分法です。微分の場合と同様に、数Ⅲの積分では、今までに学んだ様々な関数を扱います。複雑な関数を積分するために、置換積分や部分積分など新たな計算方法も出てきます。
式の形から自分で計算方法を選んで解く必要があり、複雑な関数では計算過程も複雑になりがちなので、大学入試において計算単体で出題されることもあります。
しかし、「この関数に対してはこの計算方法を使う」といったパターンは基本的に決まっているので、しっかりと練習を積めば大丈夫です。
この分野の最大の難所は、体積の問題です。
状況を把握しやすくしたり計算の手間を減らすために、問題ごとに様々な工夫が必要です。
こちらもある程度パターンはあるのですが、素早く問題の急所を見抜くためには、いろんな問題演習をしてたくさん経験を積まねばなりません。
数Ⅲの最終分野であり、これまで習ったこととも関連付けさせやすく、入試において頻出の分野です。
数Ⅲはどれくらい難しい?
「数Ⅲは難しい」という声をよく聞きますが、実際どれくらい難しいのでしょうか。
難しさの感じ方は今の数学の学力次第
数Ⅲをどれほど難しく感じるかには個人差が大きいです。
その個人差に1番大きく影響するのが、現状の数学の学力です。
高校時代の私の周りでも、もともと数学が得意な子は数Ⅲでもあまりつまずくことなく、今まで何とかやってきたぐらいの子が数Ⅲに苦しんでいた印象があります。
また、単元ごとの得意不得意ももともとの得意不得意に影響します。
私も、数Ⅱの微分・積分は得意だったので数Ⅲの微分・積分もスムーズに理解できましたが、軌跡などが苦手だったため、式と曲線では苦戦しました。
解法や計算は複雑だが出題パターンは一定
数Ⅲが得意な人に話を聞くと、「数Ⅲはパターンが決まっている」と言われることがあります。
私自身はその境地まで完全には達せられなかったのですが、受験勉強を進めていると、確かに、「パターンを知っていれば解けるじゃん」という問題に多く出会います。
数ⅠAⅡBは公式や性質などが理解しやすい分、それの応用の幅が広い印象ですが、数Ⅲはそもそも覚えるパターンが多いので、基本的にはその組み合わせで出題される印象です。
また、数ⅠAⅡBはいくらでも難しくできるが、数Ⅲは難しくしすぎると高校数学の範囲を超えてしまうという側面もあるようです。
パターン自体は多くて複雑なのですが、1度しっかり身につければ、得意分野にできます。
数Ⅲが難しいと言われる理由とは
パターンを身につければ得意にできると書きましたが、やはり数Ⅲが難しいと言う人は多いです。ここからは、数Ⅲが難しいと言われる理由について解説します。
抽象度が上がる
1つ目は、抽象度が上がることです。
具体的な数や形がイメージできるものは扱いやすいですが、数Ⅲではそうでないものも出てきます。そのため、公式や性質なども、今までと比べて覚えづらくなります。
例えば、極限で出てくる「0に収束」や「無限大に発散」といった考え方は、イメージしづらいものです。複素数平面で扱う、「虚数」も考えづらいポイントの1つです。
また、積分の体積の問題では、式として与えられた情報を図に落とし込んで考える必要があり、抽象的な条件を具体的な形にして解かねばなりません。
計算量が増える
数Ⅲでは計算量が増え、より速く正確な計算が求められます。
微分・積分では、指数関数や対数関数、三角関数をします。また、グラフを利用することも多いので、微分して増減表を書く作業も手際よく行う必要があります。
速さも大切ですが、1つ計算を間違えると、答えに辿り着けずに試験で命取りとなってしまうので、当然ながら計算の正確さも大切です。
ⅠAⅡBレベルで計算に自信がない人は計算力を高めておきましょう。
ⅠAⅡBの苦手が影響する
数Ⅲは高校数学の集大成であり、ほとんどの分野でⅠAⅡBの内容が基礎になっています。
例えば、三角関数や指数関数の式変形や処理が素早くできなければ、微分・積分の計算もその分時間がかかってしまいます。
ⅠAⅡBで苦手を残したまま、数Ⅲに進んでしまうと、数Ⅲの内容以前の段階で、苦しんでしまうでしょう。
そのため、まずは、ⅠAⅡBの内容をしっかり身につけましょう。ⅠAⅡBで最低限どの程度のレベルを目指せば良いかについては後述します。
難しいというイメージが先行している
数Ⅲは難しいと言われているのをたくさん聞いた結果、詳しく知らないにも関わらず、「数Ⅲ=難しいもの」というイメージが定着している可能性があります。
1度難しいものというイメージがついてしまうと、どうしてもそのように見えてしまいます。
そうしたイメージを軽減させるためには、数Ⅲでどんな内容を勉強しているのかを知るのがおすすめです。
今の勉強との繋がりが感じられれば、抵抗感も薄まるでしょう。
数Ⅲの勉強に向けて今からやるべきこと3選
ここからは、これから数Ⅲが始まるという人に向けて、今やるべきことを解説します。
既に数Ⅲの勉強をしている人は、以下の記事で紹介されている数Ⅲの勉強法を参考にしてみてください。
▶数Ⅲの単元って何があるの?京大生が単元別の勉強法や参考書を紹介
①ⅠAⅡBの基礎固めをする
数Ⅲの勉強に向けて最も大切なことは、ⅠAⅡBの範囲で苦手をなくし、基礎を固めることです。数Ⅲの多くの分野は、ⅠAⅡBに対応する分野があります。
例えば、数Ⅱの微分積分は数Ⅲの微分積分に繋がっており、数Ⅱの図形と方程式は数Ⅲの式と曲線に繋がっています。
ⅠAⅡBに苦手が残ったまま数Ⅲの勉強を始めてしまうと、結局数Ⅲを理解するためにⅠAⅡBの復習が必要になります。
目安としては、ⅠAⅡBで共通テストで8割ほど取れる学力を目指しましょう。
数学が苦手だという人は、以下の記事を参考に勉強するのがおすすめです。
▶【京大生直伝】数学ができない人の4つの特徴|数学ができるようになる正しい勉強法を解説!
②計算力をつける
数Ⅲでは計算量が増えるので、計算のスピードを上げる必要があります。
いくら定義や性質をしっかり理解していても、計算スピードが足りなければ試験でも問題を解ききれませんし、普段の演習量も少なくなってしまいます。
問題を解く際に、ストップウォッチを使って時間を意識して解くのがおすすめです。
また、『合格る計算』や『数学の計算革命』など計算に特化した参考書もあります。
普通の参考書は問題の解き方に焦点を当てていますが、こうした書籍では、早く正確に解くための計算方法が解説されています。
③数Ⅲの各分野のイメージを掴んでおく
数Ⅲのイメージが漠然としている人におすすめなのが、数Ⅲの各分野のイメージを把握することです。
何をやるかの全体像が掴めると、数Ⅲを過度に恐れずに済むでしょう。
また、今勉強していることとの繋がりがわかるので、モチベーションも向上するでしょう。
さらに、今数学が得意で余裕のある人は、自分の得意な分野、興味を持った分野から先取りしてみるのもおすすめです。
まとめ
今回は、数Ⅲの各分野の特徴や、難しいと言われる理由、数Ⅲに向けてやるべきことについて解説しました。
数Ⅲには以下の5つの分野があります。
・複素数平面
・式と曲線
・関数と極限
・微分法
・積分法
数Ⅲは、「抽象度が上がる」「計算量が増える」などの理由から難しく感じる人が多く、まずはⅠAⅡBで苦手をなくすことが大切です。
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