この記事を読むメリット
- 数Ⅲの単元とその内容がわかる
- 数Ⅲの単元別勉強法と、単元の勉強順がわかる
- 数Ⅲのオススメ参考書がわかる
数Ⅲは多くの理系高校生にとって、大学受験の大きな壁になります。
数Ⅲは4つの単元から構成されているのですが、実は、それぞれの単元で難易度・受験での出題頻度・効率的な勉強法などが異なるので、しっかり対策法を練っていないと、大きく失敗してしまう可能性が高い科目です。
この記事では、数Ⅲの各単元の内容や特徴・勉強法の解説、単元の勉強順、オススメ参考書などを紹介します。
理系高校生の方は、数Ⅲを苦手単元ではなく、得点源にできるようにぜひ最後まで読んでいってください。
数Ⅲってどんな科目?
理系数学の最難関
数Ⅲは数学Ⅰ・Ⅱでやってきた内容がさらに複雑になった数学です。大学入試としては理系向けの個別試験でのみ課されるので、文系の人は勉強する必要はありません。
微分積分は数学Ⅱの応用という感じですが、複素数平面や極限といった新たな概念も導入され、理系高校生が習う数学の中では最も難しいです。
数Ⅲの単元について
数Ⅲは4つの単元に分かれる
数Ⅲはざっくり4つの単元に分かれています。数Ⅲの単元はどれも、これまで習ってきた数学ⅠA・ⅡBの知識を前提としています。
ここでは4つの単元それぞれについて、特徴・難易度・前提となる数ⅠA・ⅡBの知識・二次試験における出題頻度などについて紹介していきます。
- 複素数平面
- 式と曲線
- 関数と極限
- 微積
①複素数平面
複素数平面は、縦軸を虚数の軸・横軸を実数の軸とした新たな平面です。複素数平面という単元名ではありますが、学ぶ内容は平面を使ったものばかりではありません。複素数平面の範囲では、複素数の絶対値の概念やド・モアブルの定理・極形式・平面上での回転移動などを学びます。虚数がでてくるため、概念の理解がかなり難しい分野です。
しかし、大学入試では難問が問われることは少ない単元なので、基本的な問題をしっかり解けるかどうかが学習するうえで大事になってきます。計算はやや大変です。また、他の単元との融合問題が多くなっています。
数ⅠA・2Bの事前知識としては、ベクトルをしっかり学んでおくことが一番大事です。複素数平面では平面上の点と点を結んだ線をベクトルとして捉えて移動させることが多いため、ベクトルが分かっていないと、問題を解くうえでどんな操作を行っているのか分からなくなります。
2次試験での出題頻度はそれなりに高いので、自分の志望校の過去問を確認しておきましょう。よく出題されているようであれば早めの対策が必要です。
②式と曲線
式と曲線では、楕円や双曲線といった2次曲線・媒介変数表示などを学びます。平面自体は今まで使っていたものと一緒ですが、図形の形はより複雑です。楕円や双曲線の式の形や、焦点・接線の公式・媒介変数表示の形など、覚えることもやや多いです。式が文字の二乗の形で表されるので計算が大変な単元でもあります。微分積分との関連問題が多い分野なのですが、式と曲線の媒介変数表示をマスターしているとかなり計算が楽になることが多いです。
数ⅠA・ⅡBの事前知識としては、2次関数・図形と方程式・三角関数などを復習しておきましょう。
大学入試での出題頻度はあまり高くありません。楕円や双曲線そのままよりは、媒介変数表示と他の単元を絡めた融合問題の方がよく出題されます。
③関数と極限
関数と極限では、合成関数や逆関数・無限級数・関数や数列の極限などについて学びます。この単元は新たな概念の導入が多いので、なかなか理解できない人も多く、難しい単元だと言えます。直感的には関数の方が極限よりも理解が難しいと思います。しかし、関数分野は入試での出題頻度は低いため、あまり心配する必要はありません。極限は慣れてくると式の形をみたら、大体どんな風に収束や発散するか分かるようになります。極限は単体での出題もありますが、数列や確率・微分積分との融合問題が多いです。
数ⅠA・ⅡBの事前知識としては、指数関数・対数関数・数列などを復習しておきましょう。
大学入試では上でも述べたように、極限が他分野との融合系での出題頻度が高く、関数はあまり出題されません。
④微積
微積の単元は、詳しく分けると「微分」「微分の応用」「積分とその応用」に分かれるのですが、すべてつながった内容なので、ひとまとまりに捉えて勉強するといいです。微積では、数Ⅱより複雑な関数の微分・積分や、様々な関数のグラフの最大値・最小値・極値・グラフを利用した議論・立体の体積・回転体の体積・微分方程式など、かなり多くのことを学びます。微積は数Ⅲの象徴とも言える単元で、積分の応用などはかなり難易度が高いです。単純な計算問題でも、微分の公式や積分法など覚えることが多いので、習得に時間がかかります。
数ⅠA・ⅡBの事前知識としては、ほとんどすべての単元の知識が必要とされます。微積の応用の範囲では、数ⅠA・ⅡBだけでなく、数Ⅲの極限や式と曲線などの知識も必要です。
大学入試では、かなり出題頻度が高いです。ほとんどの大学において毎年出題されているので、しっかり勉強しておく必要があります。
どの順番で勉強すればいい?
複素数平面→式と曲線→関数と極限→微積
勉強する順番としては、微積を必ず最後に持ってくるようにしましょう。なぜなら、微積は数Ⅲの単元も既習でないと解けない問題が多いからです。特に、式と曲線と関数と極限は微積との関連問題が多くなっています。極限の考え方が微積の公式の基になっているので、極限を学んだ後に微積を学習するとスムーズに理解できるでしょう。
複素数平面は幾何やベクトルとの関わりが強く、数Ⅲの中では独立した単元なので、勉強する順番にそこまでこだわる必要はありません。
夏までに一周目は終わらせておくべき
入試数学は単元ごとに問題が作られるわけではなく、単元の融合問題になっている場合が非常に多いです。途中まではある単元の知識を使って解き、途中からは別の単元を使って解くといった形です。また、解法がたくさんあって、さまざまな単元の知識が使えるという場合もあります。
入試レベルの問題の演習では、すべての単元の知識を頭にいれて、どの分野の知識を使えばいいかを考えることが必要です。解法の選択が入試では重要になります。そのため、入試までにしっかり実践練習に取り組むためには、早く各単元の勉強を終わらせなければなりません。
目安としては、夏までに数Ⅲを一周終わらせることができていれば、演習の時間は十分確保できるでしょう。
演習で苦手分野を発見して集中的に取り組むことも可能なので、一つひとつの単元を完璧にしようとしすぎるあまりに、演習の時間が減ってしまうことは避けたいです。
京大理系学生が教える!単元別の勉強法
①複素数平面
どの単元の勉強でも、まずは参考書で概念を理解して、例題・練習問題に取り組むプロセスが一番大切です。ある単元を完璧にするというのは、その単元に関する公式や考え方を全部覚えて、練習問題レベルの問題はすべて解ける状態であることだといえます。
私は、数学はとりあえず手を動かして問題を解くことでしか伸びないと考えています。単元別に意識することは違っても、根本の勉強法は変わらないのです。
複素数平面の勉強で大事なことは、複素数平面を他の単元と結びつけながら勉強していくことです。複素数平面で出てくる公式の多くは、ベクトルや幾何、三角関数をしっていたら、当たり前に導出できます。また、複素数平面が入試に出題されるときは、他の分野との融合問題であることが多いです。解法がたくさんあって、計算の煩雑さが解き方によって全然違うということもあります。複素数の分野を完璧にすることはもちろん大切ですが、実際の演習での解法選択が難しいので、その勉強もしっかり行いましょう。
②式と曲線
式と曲線は、二次曲線について学ぶ単元で、楕円や双曲線がメインだと思われがちです。しかし、この単元で一番大事なのは「媒介変数表示」「極座標」です。式と曲線が単体で入試に出題されることは少ないですが、媒介変数表示や極座標は微積とからめてよく出題されます。これらをしっかり習得しておかないと、計算量が膨大になりすぎて、本番では解けない可能性が高いです。そのため、媒介変数表示・極座標を重点的に勉強することがポイントです。
また、楕円や双曲線を学ぶときは定義を大事にしましょう。よく見る図形ですが、ちゃんとどんな図形かの定義をおさえておかないと、理解しにくい部分があります。印象のうすい単元ではありますが、公式はすべて覚えるようにしてくださいね。
③関数と極限
関数と極限では、極限の方が重要です。関数は、無理関数や分数関数についてはグラフでしっかり書けるようにすることがポイントです。逆関数と合成関数については、慣れれば問題を解くことは難しくないのですが、概念がすこし理解しにくいのが難点です。この2つは単体で入試に出題されることは基本ないのですが、難関大では問題に絡められることがあるのできちんと定義を押さえておく必要があります。
極限は「関数の極限」と「数列の極限」に分けられるのですが、関数の極限ができていれば、数列の極限はほぼ数列の問題といえるので、あまり気負う必要はありません。関数の極限は定義と公式をしっかり確認しておきましょう。限界の値を考えるというだけでなく、どうやって限界の値に近づけるかという細かい点にも気をつける必要があります。また、対数や三角関数の極限では、自分のイメージと異なる極限に収束する、ということが多いです。極限の勉強をするときは、収束する値が予想とずれていたかも考えるといいでしょう。
④微積
微積の勉強のポイントは、最初はとにかく計算練習をこなすことです。公式がたくさんでてきますが、すべての公式を完璧に覚える必要があります。また、積分は公式だけでなく、部分積分や区分求積法などの積分法の考え方や、特定の関数のパターン化された積分まですべて習得する必要があります。微積は計算してなんぼの単元なので、ミスなく素早く計算できるよう計算練習は必須です。
計算が完璧になったら、「微分の応用」「積分の応用」にも取り組んでいきましょう。微分の応用はあまり難しくありません。複雑な関数の増減表とグラフが書けるようになりましょう。積分の応用では、回転体の体積などは、立体を想像する数学的センスも必要とされ、難しいです。積分の最後のほうは、難関大以外で出題されることは少ないので、自分の志望校のレベルと出題傾向に合わせて割く時間を考えるようにしましょう。
【PR】数Ⅲのオススメ参考書3選
①改訂版 チャート式 基礎からの数学Ⅲ
「青チャート」と呼ばれているこの参考書は、非常に網羅性が高い参考書です。地方国公立から東大・京大レベルを目指す人にもオススメできます。単元別に習得すべき内容はすべて含まれており、各単元を学ぶ最初の1冊として非常に使いやすいです。例題と練習問題が1対1で対応しており、例題で学んで、練習問題を自力で解いてみるというのがオススメです。しかし、かなり分厚い参考書なので、学校で他の参考書を使っていてあまり時間を割けないという方には、辞書的な使い方をオススメします。
公式の証明や、解答のポイントや方針もきちんと載せてくれているので、教科書代わりにもなる1冊です。
②初めから始める数学Ⅲ
数学Ⅲを1から学ぶことのできる、入門の参考書です。数学の苦手な人でも分かるように非常に分かりやすく解説されており、数Ⅲの概要把握にオススメの1冊になっています。全部で12回の講義形式になっていて、最短2週間で数Ⅲが分かる、かるめの参考書です。飽きっぽい人や数学が苦手な人に向いています。
この参考書だけでは数学Ⅲに重要な演習量が不足してしまうので、この参考書で基礎を学んだあとに、問題集や別の網羅系参考書で問題演習を積むようにしましょう。
③1対1対応の演習
1対1対応の演習は、チャートなどの網羅系参考書を終えたあとにオススメする参考書です。苦手な単元がある人にオススメですが、難関大を目指す方は、その大学で頻出の単元を完璧にするという意味で使うのも効果的です。
1対1対応の演習は分野別の問題集となっており、扱っている問題が絞られています。どれも重要な問題ばかりで、ポイントを復習しやすいです。できるだけ少ない問題数でその分野を完璧にするという目的で作られています。1対1対応の演習で理解がたりていなかった部分はまた網羅系参考書に戻って復習しましょう。
まとめ
数Ⅲは以下の4つの単元で構成されています。
- 複素数平面
- 式と曲線
- 関数と極限
- 微積
数学Ⅲは、「複素数平面」→「式と曲線」→「関数と極限」→「微積」の順番に勉強するようにしましょう。夏までに1周終わらせることが理想的です。
この記事では、単元別の有効な勉強法と数Ⅲのオススメ参考書を紹介しているので、数Ⅲを勉強する際にはぜひ参考にしてください。