- 古文を読むうえで、助動詞って本当に大切なの?
- 助動詞の種類や意味が多すぎて覚えられない
このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
実は、古文において助動詞は読解のカギとなる重要な品詞です。
助動詞1つで文の意味はひっくり返ってしまうので、古文単語を覚えていても文をまったく別の意味に解釈してしまうことがあります。
助動詞は意味だけでなく活用・接続も覚える必要があり、マスターするのは少し大変です。だからこそ、助動詞を完璧にすることで他の受験生に差をつけることができます。
そこで今回は、助動詞の大切さ・助動詞の勉強法・個々の助動詞の活用、意味などのポイント・オススメの参考書をご紹介します。
この記事を読むと、自分が具体的にどのような勉強をすればいいかが分かります。
勉強の際にも、個々の助動詞の解説として役に立つこと間違いなしです。
今回紹介する情報
- 助動詞の大切さ
- 勉強法
- 個々の助動詞の活用法
- 意味などのポイント
- オススメの参考書
そもそも助動詞ってなに?
そもそも助動詞とは?
古文には十種類の品詞がありますが、その中で助動詞は「活用する付属語」として分類されます。
付属語とは、常に自立語に付属している単語で、それだけでは節を作れないものです。活用とは、前後の言葉に合わせて、単語の語尾などが変化することを指します。
助動詞の役割は、その漢字にも表れているように、「動詞を助ける」ことです。動詞に接続して、動詞に意味を付け加えます。
助動詞は文章読解の重要なカギ
助動詞は約30種類あり、それぞれに重要な意味があります。
これらを理解することは文章読解において非常に大切です。なぜなら、助動詞は、登場人物の気持ちや時制に関わっており、文の意味は助動詞によって大きく変わるからです。
たとえば「受身」が分からなければ、主語がだれに当たるのか分かりません。
「推量」が分からなければ、物事が推量なのか事実なのかが分かりません。
「打消」が分からなければ、物事があったのかなかったのかすら分かりません。
つまり助動詞を理解しないと古文の文章読解は絶対に出来ないのです。
助動詞は、古典における最重要品詞といっても過言ではありません。試験でも狙われやすいため、しっかり覚える必要があります。
助動詞は文理解に繋がります!
助動詞ってなにから勉強すればいいの?
「接続」⇒「活用形」⇒「意味」の順で覚える
助動詞には「接続」「活用」「意味」の3つの要素がありますが、これらを同時に覚えようとするのは無謀です。助動詞は種類が多く、複数の意味をもつ助動詞も多いので、混乱してしまうでしょう。
そこで、「接続」⇒「活用形」⇒「意味」の順番で、一つずつ理解して覚えていきましょう。
この順番で覚えていきましょう。
- 接続
- 活用法
- 意味
多くの活用表も上からこの順番で載っているので、上から順番に覚えていきましょう。各段階の説明や覚え方は後述の「助動詞の勉強法3ステップ」で詳しく解説します。
助動詞の勉強はとにかく音読と演習量が大事です。
とくに活用形は何度も唱えて、リズムで覚えてしまうことがオススメです。接続・活用形・意味の3つをすべて覚えたら、実際に古文中で助動詞を識別していくことになりますが、これは演習量がものをいいます。
頻出の識別やパターンを演習を通して身に付けていきましょう。
助動詞の勉強法3ステップ
①まず「接続」を覚える
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助動詞はそれぞれ決まった語形に接続します。
接続とは、助動詞の前の動詞がどのような形になるかの約束事です。
現代語においても、たとえば「なる」なら、「なら」ない、「なり」ます、「なる」らしい、と助動詞によって前の動詞が変形します。
古文では、具体的には、動詞の未然形、連用形、終止形、連体形、体言・助詞・副詞、に接続するものに分類されます。助動詞は形が似ているものが多く、接続を知らなければどの助動詞なのかを区別できない場合があります。
練習問題:「に」の識別
たとえば、下の2文における「に」の意味を区別したいとします。
「花散り“に”けり」
「そなたはわが母“に”やあらむ」
古文の「に」は助動詞だけではなく、助詞やナ変動詞などである可能性などもあるのですが、今回は2つの助動詞に可能性を絞って解説します。
思考の順番
- 「に」になる可能性があるのは、完了・強意の助動詞「ぬ」と断定の助動詞「なり」の2つです。
- ここで「ぬ」は連用形接続であり、「なり」は終止形接続なので、「に」の前の語の形によってどちらの助動詞かを識別できます。
- 「花散りにけり」は、四段動詞「散る」の連用形「散り」の後に「に」がついています。
- よって、この「に」は「ぬ」の連用形であり、完了の意味だと分かります
- 以上より、この文の訳は「花が散ってしまった」だと解釈できます。
- 「そなたはわが母にやあらむ」は「わが母」という体言(名詞)の後に「に」がついています。
- よって、この「に」は「なり」の連用形であり、断定の意味だと分かります。
- 以上より、この文の訳は「あなたは私の母であるだろうか」(「である」の部分が断定)となります。
- もし「ぬ」と「なり」の接続を知らず、識別できなければ、「花が散ったのだ」や「あなたは私の母だったのだろうか」と間違った訳をしてしまう可能性があります。
このように、助動詞の識別をするには接続を覚えていることが必須です。
助動詞の接続一覧は下記の表の通りです。
接続 | 助動詞 |
---|---|
未然形接続 | る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし |
連用形接続 | き・けり・つ・ぬ・けむ・たし・たり |
終止形接続 | べし・らむ・めり・らし・まじ・なり |
連体形接続 | なり・たり・ごとし |
例外 | り |
この接続は音読を繰り返して丸暗記するしかありません。
何度も復唱して、覚えたと思ったら暗唱して確かめてみましょう。「そもそもどんな助動詞があるのか覚えられない」という人も、接続を暗唱することで自然と助動詞をすべて覚えることができます。
語呂合わせで接続を暗記する方法
そうはいっても、この量の暗記はなかなか大変ですよね。暗記が苦手な人のために、語呂合わせで接続を暗記する方法もあるのでご紹介いたします。
語呂合わせ
- 未然形:ムズムズじんましんまー欲しい+尊敬の意味を持つ助動詞5つ (む/ず/むず/じ/まし/まほし)+(る/らる/す/さす/しむ)
- 運用形:月蹴りぬ。煙足したり。+(つ/き/けり/ぬ。/けむ/たし/たり)
- 終止形:まじメリーら知らんべしなり。+(まじ/めり/らし/らむ/べし/なり)
②活用形を覚える
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ステップ①で助動詞の終止形は覚えましたが、助動詞は古文の中でさまざまな形で登場するので、終止形だけを覚えていても対応できません。
古文を正確に読解するためには、他の活用形も覚えることが必要です。
覚えていないと、先ほどの識別の例でいえば、そもそも「に」の形になる助動詞がなんなのか候補が分からないという状態になってしまいます。
助動詞には他の活用語と同様に、未然・連用・終止・連体・已然・命令の6つの活用形があり、活用の型は以下の4パターンに分類されます。
活用の型
- 動詞と同じ活用(四段・下二段・ラ変・ナ変・サ変)
- 形容詞・形容動詞と同じ活用(ク活用・シク活用・ナリ活用・タリ活用)
- 特殊型
- 無変化型
①②④は簡単に覚えられます。③はなんども音読して丸暗記するしかありません。
助動詞の活用を覚えるにはリズム良く音読するのが一番です。何度も唱えて、短期間で一気に覚えてしまいましょう。
③意味を覚える
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①②で助動詞の仕組みを覚えたら、次は意味を覚えていきましょう。
意味は、一通り目を通した後は問題演習で慣れていくことがオススメです。
助動詞には複数の意味を持つものもあるので、すべて丸暗記するのはなかなか大変です。そこで、問題演習を通して意味を覚えていく方法をご紹介します。
問題演習を通して、意味を覚えていく方法
- 接続と活用が分かれば、意味は分からずとも品詞分解はある程度できます。そこから意味を推測して、解説を読みましょう。
- 解説を読んで、その都度意味を決定するポイントを理解し、自分でノートにまとめていきましょう。その過程で、各助動詞がどのような意味を持つのかも自然と覚えていきます。
- 解説を見たあとは分かった気になるので、1、2日後くらいにもう一度解いて定着を確認しましょう。
どうしても覚えられない場合は意味を丸暗記してしまうのも1つの手ですが、問題を解くときに毎回思い出すのは時間がかかってしまいます。
問題演習で助動詞を学習することで、助動詞を理解することができます。古文を素早く正確に理解するために、問題演習を通して、すべて暗記できたという状態を目指しましょう。
個別の助動詞の解説
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個別の助動詞の解説をさせていただきます。
未然形接続の助動詞
①「る」「らる」受身・尊敬・自発・可能
「る」「らる」
接続:「る」 四段・ナ変・ラ変の未然形
「らる」四段・ナ変・ラ変以外の未然形
活用:下二段型
活用 | るの活用 | らるの活用 |
---|---|---|
基本形 | る | らる |
未然形(~ず) | れ | られ |
連用形(~て) | れ | られ |
終止形(~。) | る | らる |
連体形(~こと) | るる | らるる |
已然形(~ども) | るれ | らるれ |
命令形(~。) | れよ | られよ |
意味
- 受身(~れる、~られる)
- 尊敬(~なさる、お~になる)
- 自発(~できる)
- 可能(自然に~になる)
「る」「らる」はどちらも未然形に接続しますが、接続する動詞の活用によって使い分けられます。
「る」は未然形の母音が「ア」の動詞、「らる」は未然形の母音が「イ、エ、オ」の動詞に接続する、と考えると分かりやすいでしょう。
②「す」「さす」「しむ」使役・尊敬
「す」「さす」「しむ」
接続:「す」 四段・ナ変・ラ変の未然形
「さす」四段・ナ変・ラ変以外の未然形
「しむ」すべての動詞の未然形
活用:下二段型
活用 | すの活用 | さすの活用 | しむの活用 |
---|---|---|---|
基本形 | す | さす | しむ |
未然形(~ず) | せ | させ | しめ |
連用形(~て) | せ | させ | しめ |
終止形(~。) | す | さす | しむ |
連体形(~こと) | する | さする | しむる |
已然形(~ども) | すれ | さすれ | しむれ |
命令形(~。) | せよ | させよ | しめよ |
意味:使役・尊敬
- 使役(〜させる)
- 尊敬(〜なさり、お〜になる)
「す」「さす」は和文体で用いられますが、「しむ」は漢文訓読体で用いられます。
意味の見分け方として、「す」「さす」「しむ」の直後に尊敬を表す語がない場合はすべて使役の意味です。
直後に尊敬を表す語がある場合は、使役と尊敬どちらの意味の場合もありますので注意しましょう。
③「ず」打消
「ず」
接続:未然形
活用:特殊型
活用 | ずの活用 | ざらの活用 |
---|---|---|
基本形 | ず | |
未然形(~ず) | (ず) | ざら |
連用形(~て) | ず | ざり |
終止形(~。) | ず | ○ |
連体形(~こと) | ぬ | ざる |
已然形(~ども) | ね | ざれ |
命令形(~。) | ○ | ざれ |
意味:打消
- 打消(~ない)
「ず」が打消というのは現代語にも通じる形なので、知っている人は多いかと思います。
「ず」に関する頻出問題は、打消の「ず」と完了の「ぬ」の見分けです。
「ず」の連体形と「ぬ」の終止形は共に「ぬ」、「ず」の已然形と「ぬ」の命令形はともに「ね」になります。接続からどちらの助動詞なのかを見極めましょう。
④「じ」打消推量・打消意志
「じ」
接続:未然形
活用:特殊型
活用 | じの活用 |
---|---|
基本形 | じ |
未然形(~ず) | ○ |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | じ |
連体形(~こと) | じ |
已然形(~ども) | じ |
命令形(~。) | ○ |
意味:打消推量・打消意志
- 打消意志(~ないだろう、~まい)
- 打消意志(~ないようにしよう)
「じ」は後述の推量の助動詞「む」の打消です。
主語が一人称の場合は打消意志に、二人称・三人称の場合は打消推量であることが多いです。
⑤「む」「むず」推量・意志・勧誘・仮定・婉曲・適当
「む」「むず」
接続:「む」 未然形
「むず」未然形
活用:サ変型
活用 | むの活用 | むずの活用 |
---|---|---|
基本形 | む | むず |
未然形(~ず) | ○ | ○ |
連用形(~て) | ○ | ○ |
終止形(~。) | む | むず |
連体形(~こと) | む | むずる |
已然形(~ども) | め | むずれ |
命令形(~。) | ○ | ○ |
意味:推量・意志・勧誘・適当・仮定・婉曲
- 推量(〜だろう)
- 意志(〜よう、〜つもりだ)
- 勧誘(〜たらどうか、〜しないか)
- 適当(〜がよいだろう)
- 仮定(〜ならば、〜たら、〜ても)
- 婉曲(〜のような)
「む」「むず」は「ん」「んず」と表記されることもあるので注意が必要です。「む」「むず」は非常に多くの意味を持ちます。主な見分け方としては、以下の二つが挙げられます。
- 文の途中にあって連体形→仮定・婉曲
それ以外→推量・意志・適当・勧誘
- 主語が一人称→意志
主語が二人称→適当・勧誘
主語が三人称→推量
「む」「むず」の意味は、下の語呂合わせで覚えましょう。
す(推量)い(意志)か(勧誘)か(仮定)え(婉曲)て(適当)→すいかかえて
⑥「まし」反実仮想・推量・ためらいの意志、希望
「まし」
接続:未然形
活用:特殊型
活用 | ましの活用 |
---|---|
基本形 | まし |
未然形(~ず) | ましか(ませ) |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | まし |
連体形(~こと) | まし |
已然形(~ども) | ましか |
命令形(~。) | ○ |
意味:反実仮想・ためらいの意志、希望・推量
- 反実仮想(もし〜としたら・・ただろうに)
- ためらいの意志、希望(〜かしら、〜しようかしら、〜ならよいのに)
- 推量(〜だろう)
「まし」は反実仮想の意味が特徴的です。
反実仮想は、現実に反することを想定するので、仮定条件と組み合わせて用いられます。反実仮想の構文として、以下の4つが頻出です。
- 〜ましかば、〜まし
- 〜ませば、〜まし
- 〜せば、〜まし
- 未然形+ば、〜まし
⑦「まほし」希望
「まほし」
接続:未然形
活用:形容詞型
活用 | まほしの活用 | |
---|---|---|
基本形 | まほし | |
未然形(~ず) | (まほしく) | まほしから |
連用形(~て) | まほしく | まほしかり |
終止形(~。) | まほし | ○ |
連体形(~こと) | まほしき | まほしかる |
已然形(~ども) | まほしけれ | ○ |
命令形(~。) | ○ | ○ |
意味:希望
- 希望(〜たい、〜てほしい)
「まほし」は「たし」と同様に「希望」の意味で使われる言葉です。2つセットで覚えましょう。「まほし」は平安時代によく使われました。
連用形接続の助動詞
⑧「き」直接体験の過去
「き」
接続:連用形(カ変・サ変には未然形にもつく)
活用:特殊型
活用 | きの活用 |
---|---|
基本形 | き |
未然形(~ず) | (せ) |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | き |
連体形(~こと) | し |
已然形(~ども) | しか |
命令形(~。) | ○ |
意味:直接過去
- 直接過去
- 直接過去(~た)
「き」は自分が実際に経験した過去を表します。
未然形の「せ」は、反実仮想の「~せば」の形でのみ用いられます。
⑨「けり」間接経験の過去・詠嘆
「けり」
接続:連用形
活用:ラ変型
活用 | けりの活用 |
---|---|
基本形 | けり |
未然形(~ず) | (けら) |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | けり |
連体形(~こと) | ける |
已然形(~ども) | けれ |
命令形(~。) | ○ |
意味:過去伝聞・過去詠嘆
- 過去伝聞(〜た(とかいう))
- 詠嘆(〜だなあ、ことよ)
「けり」は自分が直接経験したのではなく、他人から聞いた過去を表します。
地の文で用いられることが多いです。逆に、会話文中の「けり」は詠嘆を表していることが多く、和歌中の「けり」は必ず詠嘆です。詠嘆とは、それまで意識していなかった事実に気づいた驚きや感嘆を表します。
⑩「つ」「ぬ」完了・強意
「つ」「ぬ」
接続:「つ」 連用形
「ぬ」 連用形
活用:下二段型
活用 | つの活用 | ぬの活用 |
---|---|---|
基本形 | つ | ぬ |
未然形(~ず) | て | な |
連用形(~て) | て | に |
終止形(~。) | つ | ぬ |
連体形(~こと) | つる | ぬる |
已然形(~ども) | つれ | ぬれ |
命令形(~。) | てよ | ね |
意味:強意・完了
- 強意(きっと〜、まさに〜)
- 完了(〜た、〜てします)
「つ」と「ぬ」の違いとして、「つ」は意志的に動作を完結させるというニュアンスがあるのに対し、「ぬ」には自然的に動作が完結するというニュアンスが含まれます。
「つ」「ぬ」の直後に推量の助動詞「む」「べし」などがあるとき(「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」)は、「つ」「ぬ」は強意の意味を表すと考えましょう。
⑪「たり」完了・存続
「たり」
接続:連用形
活用:ラ変型
活用 | たりの活用 |
---|---|
基本形 | たり |
未然形(~ず) | たら |
連用形(~て) | たり |
終止形(~。) | たり |
連体形(~こと) | たる |
已然形(~ども) | たれ |
命令形(~。) | たれ |
意味:存続・完了
- 存続(〜ている)
- 完了(〜た、〜てしまう)
「たり」は「り」と同じで存続・完了の意味を持ちます。この2つの助動詞は共にラ変動詞「あり」の派生した語なので、意味が同じで活用もともにラ変型です。
意味を考えるときは、とりあえず存続の意味で訳してみて、文脈に合わなかったら完了であると考えるのがよいでしょう。
⑫「たし」希望
「たし」
接続:連用形
活用:形容詞型
活用 | たしの活用 | |
---|---|---|
基本形 | たし | |
未然形(~ず) | (たく) | たから |
連用形(~て) | たく | たかり |
終止形(~。) | たし | ○ |
連体形(~こと) | たき | たかる |
已然形(~ども) | たけれ | ○ |
命令形(~。) | ○ | ○ |
意味:希望
- 希望(〜たい)
「たし」は同じく希望の意味をもつ「まほし」とセットで覚えましょう。
「たし」は鎌倉時代以後、盛んに用いられました。現代語の「~したい」は「たし」が由来の言葉です。
⑬「けむ」過去推量・過去伝聞・過去婉曲
「けむ」
接続:連用形
活用:四段型
活用 | けむの活用 |
---|---|
基本形 | けむ |
未然形(~ず) | ○ |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | けむ |
連体形(~こと) | けむ |
已然形(~ども) | けめ |
命令形(~。) | ○ |
意味:過去推量・過去伝聞・過去婉曲
- 過去推量(〜だろう)
- 過去原因推量(〜たというわけなのだろう、〜だのだろう)
- 過去伝聞(〜た(とかいう))
- 過去婉曲(〜たような)
「む」「けむ」「らむ」は3つセットで覚えましょう。「けむ」は「む」の過去、「らむ」は「む」の現在と覚えておくといいです。
過去の原因推量では、疑問語を伴うことで原因・理由を示さない場合と、原因・理由を示す場合があります。
終止形接続の助動詞
⑭「べし」推量・意志・可能・当然・命令・適当
「べし」
接続:終止形(ラ変には連体形)
活用:形容詞型
活用 | べしの活用 | |
---|---|---|
基本形 | べし | |
未然形(~ず) | (べく) | べから |
連用形(~て) | べく | べかり |
終止形(~。) | べし | ○ |
連体形(~こと) | べき | べかる |
已然形(~ども) | べけれ | ○ |
命令形(~。) | ○ | ○ |
意味:推量・意志・可能・当然・命令・適当
- 推量(きっと〜だろう)
- 意志(きっと〜よう、〜たい)
- 可能(〜できる)
- 当然(〜べきだ、〜はずだ)
- 命令(〜せよ、〜なさい)
「べし」は「む」の意味を強めた助動詞だと解釈されます。そのため、「む」と同様に人称が意味を見分ける手がかりとなります。
- 主語が一人称→意志
- 主語が二人称→適当・命令
- 主語が三人称→推量
しかし、あくまで手がかりなので、最終判断は文脈から行いましょう。
「べし」の意味は、下記の語呂合わせで覚えられます。
す(推量)い(意志)か(勧誘)と(当然)め(命令)て(適当)→すいかとめて
⑮「らむ」現在推量・現在伝聞・現在婉曲
「らむ」
接続:終止形(ラ変には連体形)
活用:四段型
活用 | らむの活用 |
---|---|
基本形 | らむ |
未然形(~ず) | ○ |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | らむ |
連体形(~こと) | らむ |
已然形(~ども) | らめ |
命令形(~。) | ○ |
意味:現在推量・現在婉曲・婉曲
- 現在推量(今頃は〜ているだろう)
- 現在の原因推量(どうして〜なのだろう)
- 伝聞・婉曲(話では〜という、文献によれば〜だという)
現在推量は、自分の目の前にないものについて、現在のようすを推量することです。
逆に、現在の原因推量は、自分の目の前で起こっていることについて、その原因を推量することを表します。「けむ」(過去)「む」「らむ」(現在)は3つセットで覚えましょう。
⑯「めり」推定・婉曲
「めり」
接続:終止形(ラ変には連体形)
活用:ラ変型
活用 | めりの活用 |
---|---|
基本形 | めり |
未然形(~ず) | ○ |
連用形(~て) | めり |
終止形(~。) | めり |
連体形(~こと) | める |
已然形(~ども) | めれ |
命令形(~。) | ○ |
意味:推定・婉曲
- 推定(〜ように見える、〜ようだ)
- 婉曲(〜ように思われる、〜ようだ)
「めり」の推定は、目で見た事実に基づいて推測することを表します。
「めり」は「見あり」が変化して、目で見たことの推測を表す助動詞になりました。
これに対して、推定の助動詞「なり」は「音あり」が変化して、耳で聞いたことをもとに推測するという意味の助動詞になりました。
⑰「らし」推定
「らし」
接続:終止形(ラ変には連体形)
活用:特殊型
活用 | らしの活用 |
---|---|
基本形 | らし |
未然形(~ず) | ○ |
連用形(~て) | ○ |
終止形(~。) | らし(らしき) |
連体形(~こと) | らし |
已然形(~ども) | らし |
命令形(~。) | ○ |
意味:推定
- 推定(~らしい、~にちがいない)
「らし」は確かな根拠に基づいた推測を表します。
⑱「まじ」打消推量・打消意志・不可能・打消当然・禁止・不適当
「まじ」
接続:終止形(ラ変には連体形)
活用:形容詞型
活用 | まじの活用 | |
---|---|---|
基本形 | まじ | |
未然形(~ず) | (まじく) | まじから |
連用形(~て) | まじく | まじかり |
終止形(~。) | まじ | ○ |
連体形(~こと) | まじき | まじかる |
已然形(~ども) | まじけれ | ○ |
命令形(~。) | ○ | ○ |
意味:打消推量・打消意志・打消当然・不適当・不可能・禁止
- 打消推量(~ないだろう)
- 不可能(〜できそうにない)
- 打消当然・不適当(〜はずがない、〜べきでない)
- 禁止(〜してはならない)
「まじ」は「べし」の打消の意味をもつ助動詞です。
「む」の意味を強めたのが「べし」であり、「む」の打消は「じ」であるので、「じ」を強めたものが「まじ」であると解釈されます。
⑲「なり」推定・伝聞
「なり」
接続:終止形(ラ変には連体形)
活用:ラ変型
活用 | なりの活用 |
---|---|
基本形 | なり |
未然形(~ず) | ○ |
連用形(~て) | なり |
終止形(~。) | なり |
連体形(~こと) | なる |
已然形(~ども) | なれ |
命令形(~。) | ○ |
意味:伝聞、推定
- 伝聞(〜ということだ、〜だそうだ)
- 推定(〜らしい、〜ようだ)
「なり」には伝聞・推定の助動詞と断定の助動詞の2種類があります。
伝聞・推定は終止形接続、断定は体言・連体形接続というので見分けましょう。
「なり」の推定は耳で聞いた事柄をもとに推測することを表します。目で見た情報から推定する「めり」との対比で覚えましょう。
連体形・体言接続の助動詞
⑳「なり」断定・存在
「なり」
接続:体言(名詞)・活用語の連体形
活用:形容動詞型
活用 | なりの活用 |
---|---|
基本形 | なり |
未然形(~ず) | なら |
連用形(~て) | なり・に |
終止形(~。) | なり |
連体形(~こと) | なる |
已然形(~ども) | なれ |
命令形(~。) | (なれ) |
意味:断定・存在
- 断定(〜である)
- 存在(〜にある)
体言・連体形に接続する「なり」は断定・存在を表します。
「なり」は格助詞「に」+ラ変動詞「あり」が変化した形です。
同じく体言接続で断定の助動詞である「たり」は漢文訓読体で用いられますが、「なり」は和文体や和歌で多く用いられました。
㉑「ごとし」比況
「ごとし」
接続:体言(名詞)・活用語の連体形・助詞「の」「が」に接続
活用:形容詞型
活用 | ごとしの活用 |
---|---|
基本形 | ごとし |
未然形(~ず) | (ごとく) |
連用形(~て) | ごとく |
終止形(~。) | ごとし |
連体形(~こと) | ごとき |
已然形(~ども) | ○ |
命令形(~。) | ○ |
意味:比況
- 比況(〜のようだ)
- 例示(〜のような、〜など)
比況は、あることを他のことにたとえて訳すこと(比喩)を表します。例示は、多くの事柄から例を挙げて示すことです。
㉒「たり」断定
「たり」
接続:体言(名詞)
活用:形容動詞型
活用 | たりの活用 |
---|---|
基本形 | たり |
未然形(~ず) | たら |
連用形(~て) | たり・と |
終止形(~。) | たり |
連体形(~こと) | たる |
已然形(~ども) | たれ |
命令形(~。) | たれ |
意味:断定
- 断定(〜である)
「たり」には完了・存続と断定の2種類の助動詞があります。完了・存続の「たり」は連体形接続、断定の「たり」は体言に接続することで見分けましょう。
特殊な接続の助動詞
㉓「り」完了・存続
「り」
接続:サ変の未然形・四段の已然形
活用:ラ変型
活用 | りの活用 |
---|---|
基本形 | り |
未然形(~ず) | ら |
連用形(~て) | り |
終止形(~。) | り |
連体形(~こと) | る |
已然形(~ども) | れ |
命令形(~。) | れ |
意味:存続・完了
- 存続(〜ている、〜てある)
- 完了(〜た、〜てしまう)
「り」は特別な活用をする助動詞です。サ変動詞の未然形と四段動詞の已然形にのみ接続します。
「サ未四已“り”かちゃん」→「さみしいりかちゃん」という語呂合わせで覚えましょう。意味は「たり」とまったく同じです。
【PR】京大文学部生が選ぶ!助動詞の勉強にオススメな参考書3選
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望月光の古文教室 古典文法編 改訂版
『望月光の古文教室 古典文法編』は、古文の基礎でつまづいている人にオススメの参考書です。
この参考書は大きく2部に分かれており、1部では古文の勉強に必要な基礎を、2部では実際に古典文法を学びます。活用や品詞といった、古文の根幹を説明してくれているので、古文の入門にピッタリの1冊です。
2部ではすべての古典文法の解説が一通り載っていて、助動詞も詳しく解説されています。
最初は何度も繰り返し読んで暗記しましょう。
章ごとに例題がついているので、実際に使いこなせるまで練習することが可能です。
しかし、あくまで講義メインの参考書なので、より演習を重ねたい方は、後述の『基礎からのジャンプアップノート 古典文法・演習ドリル 改訂版』を併用することがオススメです。
基礎からのジャンプアップノート 古典文法・演習ドリル 改訂版
『基礎からのジャンプアップノート 古典文法・演習ドリル 改訂版』は古文の基礎的な問題演習がしたいという方、1通り学び終えて復習がしたいという方にオススメの参考書です。
古文の重要事項を1通り学べ、問題のレベルとしては学校の定期テスト程度です。
問題演習だけの構成ではなく、「文法解説→チェック問題→練習問題」と段階を踏んで勉強できるようになっています。文法解説は、教科書のように網羅的なわけではなく、重要事項をまとめている形なので、初学者の方は文法の参考書と併用しましょう。
問題としては受験古文に必要なことは網羅的に扱われており、別冊の解説も非常に丁寧です。
富井の古典文法をはじめからていねいに
『富井の古典文法をはじめからていねいに』は、古文が苦手な人や初学者でも学びやすい一方、受験までの復習用にも使える参考書です。
この参考書の文章は富井先生の喋り口調で非常に読みやすくなっています。
内容も本当の基礎の部分から、基礎知識がなくても安心です。
この参考書では、古典文法の知識を使って実際に古文を読み解く方法が学べます。
古文が読めるようになるには、助動詞などを暗記するだけでなく、文章の中で文法的に理解しなければなりません。他の参考書では基礎知識として省かれるところも、この参考書は手厚く解説されています。
古典文法を学びながら、古文を読めるようになりたい人はぜひ使ってみてください。
まとめ 古文助動詞は「接続→活用形→意味」の3ステップで暗記しよう!
今回は、助動詞の具体的な勉強法や個々の助動詞の解説、オススメ参考書の紹介をしました。
この記事のポイント
- 助動詞の勉強は3ステップ「接続」⇒「活用形」⇒「意味」
- 接続は語呂合わせを利用して丸暗記。
- 活用形は4種類。特殊型を重点的に覚えよう。音読が有効。
- 意味は問題演習を通して、使える知識を身に付けよう。
助動詞は目立たない存在ですが、文章読解のカギになる品詞です。他の人が覚えていないからこそ、ここで差をつけることができます。
この記事で紹介した勉強法・参考書を実践して、古文助動詞をマスターしてください。