『物理のエッセンス』の使い方とレベルを現役京大生が解説

『物理のエッセンス』は、河合出版が出版している講義と問題がまとまったコンパクトな参考書です。
物理の基礎的な範囲が網羅的に収録しており、図やイラストを用いて視覚的に解説されているので、「感覚的な理解」と「考え方の流れ」を身につけられます。

ただ、『物理のエッセンス』の解説が本当にわかりやすいのか、どのように進めると学習効果が高いのかを見極めるのは難しいですよね。

この記事では、『物理のエッセンス』の問題の難易度や解説の詳しい内容、効果的な使い方などを解説します。本の具体的な内容や問題の難易度を理解して、適切な参考書選びができるようになることを目指しましょう

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『物理のエッセンス』の商品情報

『物理のエッセンス』の基本情報です。

物理のエッセンス 力学・波動 (河合塾シリーズ)
価格1,034円([力学・波動]/[熱・電磁気・原子])
科目物理
出版社河合出版
目的物理現象の本質を理解し、基礎固めを行う
対象ユーザー物理を学ぶすべての高校生
レベル中堅私立大〜レベル
難易度やさしい〜普通
特徴本書は、講義と問題がコンパクトにまとまっており、物理の基礎的な範囲が網羅的に解説されている反面、細かな説明が省略されているため物理が苦手な人にとってはわかりにくい可能性があります。

『物理のエッセンス』のレベル

本書のレベルは、日東駒専や産近甲龍などの中堅私立大学レベルです

本書を一通り解くことで受験物理に出てくる大半の基本問題に対応できる土台が身につきます。

難関私立大学や国公立大学を目指す人は、より難しい問題集に取り組む前の足がかりとして利用すると良いでしょう

『物理のエッセンス』で到達できる偏差値

本書を極めることで到達できる偏差値は55〜57.5です

本書では、入試基礎レベルの問題が全単元について収録されており、より応用的な問題を解くために必要な基本的な知識や解法を幅広く身につけられます

また、本書を完璧に仕上げることで早慶や旧帝大など難関大レベルの問題に取り組むための下地ができるでしょう

『物理のエッセンス』の強み

『物理のエッセンス』を他の参考書と比べた強みを紹介していきます。

物理の基礎的な範囲を網羅している

本書の最大の強みは、高校物理で学ぶ5分野全ての基礎的な事項を網羅していることです。

[力学・波動]、[熱・電磁気・原子]の2冊を通して、物理現象の理解→法則や公式を理解→例題と解説→練習問題という一連の流れで物理の全範囲を理解し、問題演習を行えます。

受験勉強を始める前にざっと物理を総復習したい人や、物理の全体感を掴みたい人におすすめできる参考書と言えるでしょう。

図やイラストでわかりやすい

図やイラストなどが多用されていてわかりやすいのも本書の強みの一つです。

本書では、解法の考え方の流れや公式の意味が図やイラストを用いて視覚的に表現されており、物理現象を直感的に理解できるでしょう。

特にイメージの掴みにくい「波動」単元では、図が多用されており、時間変化や位置の変化に伴う波の挙動が簡潔に表現されているので非常にわかりやすいです。

講義と問題がコンパクトにまとめられている

講義と問題が薄くコンパクトにまとまっているのも本書の強みと言えるでしょう。

本書では、「講義」「例題と解説」「練習問題」の3つで構成されており、理論と実践の両方を一冊で行えるのが特徴的です。

例題や練習問題の数も多すぎず、解説も要点に絞って簡潔に書かれているため、物理の全体像を効率よく把握するのに適しています。

それぞれのパートでは、入試に必要なポイントに絞って収録されているので、参考書が分厚いとやる気が出ない人にはおすすめできる参考書と言えるでしょう

『物理のエッセンス』の弱み

『物理のエッセンス』を他参考書と比べた弱みを紹介していきます。

細かな部分が省かれている

本書の最大の弱みは、細かな説明や解説が省かれている点です。
本書は必要最低限のポイントに絞った参考書であるため、物理をゼロから丁寧に教える教材ではありません。

講義と問題がコンパクトにまとまっている分、不足しがちな背景知識の説明や考え方の細かい流れなどは省略されている部分が一部あります

講義本と問題集のいいとこ取りであるが故に、詳しさという観点でどちらにも劣ってしまっている側面があるので、完全な初学者がいきなり本書だけで独学するのはやや厳しい面があるでしょう

論理的に理解したい人には不向き

本書の解説に向き不向きがあることも本書の弱みの一つです。

本書の著者は、物理における「感覚的な理解」を重要視しており、図やイラストを用いて視覚的に解説がなされているのが特徴的です。

しかし、文章での説明や具体例で論理的に理解したい人にとっては、この解説の方法がわかりにくいかもしれません

そういった人は、本書の「例題と解説」や「練習問題」の演習を通して物理現象をみることで、スムーズに理解できるでしょう

他にも、『宇宙一わかりやすい高校物理』などの平易な参考書で、具体的な例や噛み砕いた説明を活用するのも手です。

基礎力がない人には問題が難しすぎる可能性がある

収録されている問題が難しすぎる可能性があるのも本書の弱みと言えるでしょう。

「練習問題」に収録されている問題は標準〜入試基礎レベルの問題ですが、物理の基礎力が全くない人や初学者には難しすぎる可能性があります。

特に、本書は解説が簡潔で演習へのヒントが少ないため、基礎事項の理解が不十分なまま問題に取り組むと手が動かない状態になりがちです 。

その場合は、一度教科書に戻って基本事項を整理した後「例題と解説」のみを2〜3周して、物理現象として何が起こっているかを確認してみましょう

『物理のエッセンス』の使い方

ここからは、『物理のエッセンス』の正しい使い方を紹介します。

STEP1:講義部分を読む

まずは、講義部分を読み解説や解法をざっとインプットしていきましょう

この段階では、全体像を掴むことが目標なので、細部まで暗記しようとする必要はありません。

後の問題演習を通して理解できる場合もあるので、理解しようとして時間を浪費するのではなく、一旦は飛ばして例題に進んで大丈夫です

STEP2:例題と練習問題を解く

単元ごとに例題を解いてから練習問題に取り組んでいきましょう
練習問題が解いていて難しすぎると感じた場合は以下の手順で進めてみると良いかもしれません。

  1. 講義部分を見ながら例題を全て解く(1週目)
  2. 講義部分を見ずに例題を全て解く(2週目)
  3. 解けなかった問題に印をつける
  4. 印のついた問題を講義部分を見ずに解けるまでやる
  5. 練習問題に取り組む
  6. 解けなかった問題に印をつける

問題演習をしてもわからない箇所は、他の参考書で調べたり人に聞いたりして全て解消することが重要です理解の穴をなくすことができ、基礎をガチガチに固めることができます。

STEP3:講義と練習問題をもう一周する

練習問題を一通り解き終わったら、もう一度講義をサッと読んでください

自分の苦手な問題パターンを明確にしてから講義を読むことで、脳に定着しやすいだけでなく新たな気づきも得られ、インプットの質が高まります。

それが終わったら、印のついた練習問題について、講義を見ずに全て解けるようになるまで復習してからより難易度の高い問題集に取り組んでいきましょう。

『物理のエッセンス』で1問にかける時間

本書で1問にかける時間は、問題のレベルによって異なります。以下を参考にしてください。

・例題:5〜10分
例題をする目的は基本事項の確認です
この問題が解けないときは、基本的な事象の理解ができていない可能性が高いので、すぐに「講義」を読み返して復習してください
2周目に取り組むときは、よりスピードを意識して取り組むことで、本番での処理スピードを鍛えられます。

・練習問題:10〜15分
入試基礎レベルの問題が中心に収録されているので、例題よりじっくり考えて解いていきましょう
ただし15分以上考えてもわからない場合は、解くのに必要な式や現象の理解が不足している可能性があるので、積極的に解説を読んで解法を確認するのがおすすめです
本番では、限られた時間内に問題を解ききる能力も必要なので、普段から時間を意識して問題演習に取り組むと良いでしょう。

『物理のエッセンス』に関する注意点

ここでは、本書に取り組む時の注意点を紹介します。

この注意点を見ておかないと、自分にあっていない参考書で効率の悪い勉強をしてしまう可能性が高いです

以下の点に気をつけましょう。

初学者向きではない

本書の注意点として、初学者向きではないことが挙げられます。

本書では講義と問題を一冊にまとめるために、物理的原理の詳細な成り立ちや式の解説が省かれている部分があります。

そのため、物理の初学者にとっては理解がしづらいと感じられるかもしれません。
その場合は、教科書やより平易な参考書で、公式の成り立ちや基本原理などの背景知識を補う必要があります

その際、物理のエッセンスの前におすすめの参考書を参考にしてみてください。

本文を読み飛ばしてはいけない

本文を読み飛ばしてはいけないのも本書の注意点です。
各章の冒頭にある解説や解法の流れを順番通りきちんと読みましょう。

解説の構成や例題の配置は学習者が理解しやすいように考慮されており、一部分を読み飛ばすと理解が半減してしまいます

著者も指摘しているように、「必ず順番に・全ての文章を読むこと」で、物理の全体像を把握し問題を解けるようになるでしょう

他の問題集を使う必要がある

難関私大や国公立大を目指す人は本書とは別に、他の問題集に取り組む必要があります

本書で収録されている問題は、入試基礎レベルにとどまっており、難関大学を目指す人にとっては不十分だと言えます。

そういった人は、入試における典型問題を網羅した問題集に取り組むことで、入試に対応できる解法パターンを身につけられるでしょう

問題の解説を見ていて現象の理解が曖昧なところは、本書の「講義」部分や「例題と解説」に立ち返って復習してみてください。

『物理のエッセンス』の前におすすめの参考書

ここからは『物理のエッセンス』の前に使うと効果的な、おすすめの参考書を解説していきます。

漆原 晃の物理基礎・物理が面白いほどわかる本

代々木ゼミナール有名講師による、表紙が特徴的な講義本です。

『物理のエッセンス』よりもさらに丁寧な解説がなされており、特に波や電磁気などの難解な分野を学習するときには、『物理のエッセンス』と併用することで理解が深まるでしょう

『物理のエッセンス』の解説が説明不足に感じた人や、これから物理を始める人におすすめできる一冊です。

宇宙一わかりやすい高校物理

漫画やイラストを交えた解説が人気の参考書で、他の解説本と比べても特にわかりやすい入門書と言えます。

『物理のエッセンス』の解説がわからないと感じた人にとって、より具体的な例と噛み砕かれた説明でとても理解しやすいでしょう

学校の授業で理解が難しかった場合の補助教材として使ったり、問題集の解説を読んでもわからない場合の辞書として使ったりできます。

セミナー物理

教科書傍用問題集の一つで、物理の全単元について幅広い問題が収録されています。

各単元ごとに重要事項や公式、基本例題が体系的にまとめられており、学習者に配慮した教科書と対応した構成で理解しやすいでしょう

『物理のエッセンス』の例題レベルの問題が多数収録されており、物理が苦手な人はこちらで演習を積んでから『物理のエッセンス』に取り組むと、段階的に学習できるのでおすすめです

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『物理のエッセンス』の後におすすめの参考書

本書を終えた人は、過去問演習やより難易度の高い問題が収録されている参考書に取り組みましょう。

具体的には、以下の『良問の風』、『名門の森』、『物理の重要問題集』の3冊がおすすめです。

良問の風

入試における頻出問題が幅広く収録されており、汎用的な解法パターンを身につけられる一冊です。

『物理のエッセンス』と同じ著者の問題集なだけに、解説の書き方も似通っており、『物理のエッセンス』で基礎固めを終えた後に取り組むと効果的でしょう

本書をマスターすれば入試標準問題をほぼ網羅することができ、偏差値65〜67.5まで到達できます

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名問の森

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『物理のエッセンス』や『良問の風』と同じ著者の問題集で、解法パターンを身につけられます。

基本的な構成は『良問の風』と同じですが、難易度が高めな良問が多数収録されており、物理の学力を入試レベルまで一気に引き上げてくれるでしょう

旧帝大〜東京一工レベルの問題も含まれており、本書一冊で物理の応用力を極限まで高められるので、『物理のエッセンス』や『良問の風』を終えた後の総仕上げとして取り組むと良いです

筆者も大変お世話になった参考書で、本書一冊で定期テスト39点から京大実践偏差値65まで伸ばすことができました

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物理の重要問題集

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入試基礎〜応用レベルの問題が幅広く収録されている網羅系の参考書です。

基本〜難関大レベルまでの問題が難易度順に掲載されており、演習量を確保するのに向いています
エッセンスで学んだ基礎事項を様々な角度の問題で反復練習できるでしょう。

上記2冊よりも分量が多く、やりごたえのある一冊です。
『物理のエッセンス』で足りない演習量を補える反面、やり込むには相応の時間がかかるでしょう

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『物理のエッセンス』についてのよくある質問

ここからは、本書について受験生からよく質問される点について答えていきます。

名問の森とどちらがいいですか?

結論、用途別に使い分けるのがおすすめです

名問の森とエッセンスでは問題の難易度や使い方が異なり、エッセンスが基礎固め用の解説本であるのに対し、名問の森は入試演習用の問題集です

名問の森を解いていて解説を読んでもわからない問題や苦手な単元は本書で、その部分の講義を確認すると良いでしょう。

本書と名問の森のどちらかを絶対的に選ぶ必要はなく、本書の講義部分と名問の森の演習部分の両方を行き来しながら学習を進めていってください

『物理のエッセンス』の評判が悪いのはなぜですか?

本書の評判が悪いのは、本書の解説に向き不向きがあるのが原因だと考えられます

本書では、物理を学習する上で重要な「感覚的な理解」を促す解説が多くなされていますが、この理解の仕方に相性の良い悪いがあるのは否定できません。
この「感覚的な理解」が性に合わなかった人が、「解説がわかりにくい」と言っている可能性があります

本書が絶対的に悪い参考書というわけではないので、自分の理解の仕方と比べてみて本書に取り組むかどうか決めると良いでしょう

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    この記事を書いた人

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    hideaki majima

    京大工学部地球工学科に在学中の4回生。
    大阪の中堅公立高校から合格点+0.6点のギリギリ現役合格を勝ち取る。
    複数のサークル・アルバイトを経験し、スタペディアのライターをする傍ら飲食店のバイトリーダーを務める。
    現在は就活を終え、コンテンツ制作に邁進している。