『化学の新演習』は、三省堂が出版している化学の難問問題集です。
星3のハイレベルな問題演習を通じてマニアックな知識やテクニックを身につけられるだけでなく、星1、2の入試頻出問題で典型的な解法パターンを習得できる参考書になっています。
ただ、『化学の新演習』が自分の志望校レベルに合っているのか、自分の勉強方法は正しいのかを見極めるのは難しいですよね。
この記事では、『化学の新演習』の問題の難易度や正しい勉強法、合格に必要かなどを解説します。
本の具体的な内容や問題の難易度を理解して、適切な参考書選びができるようになることを目指しましょう。
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『化学の新演習』の商品情報
『化学の新演習』の基本情報です。
| 価格 | 1,870円 |
| 科目 | 化学 |
| 問題数 | 331題 |
| 出版社 | 三省堂 |
| 目的 | 化学を医学部レベルまで仕上げ、得点源にする |
| 対象ユーザー | 東大京大や難関医学部志望の受験生 |
| レベル | 旧帝〜難関医学部レベル |
| 難易度 | 難しい |
| 特徴 | 本書では、ハイレベルな問題演習を通じてマニアックな知識やテクニックを身につけられるという強みがある反面、解説が簡素でほとんどの受験生にとって難易度が高すぎるという弱みがあります。 |
『化学の新演習』のレベル
本書のレベルは、旧帝〜難関医学部レベルです。
本書は、超難関大対策に特化した化学問題集であるため、東大京大志望の中でも化学を得点源にしたい人や難関医学部を志望する一部の受験生のための参考書と言えます。
そのため、重要問題集をはじめとする入試基礎〜標準レベルの網羅系問題集を一通り終わらせてから挑戦するのが望ましいでしょう。
『化学の新演習』で到達できる偏差値
本書で到達できる偏差値は、70〜72.5です。
本書を星3の問題を含めて8割以上解けるようにすれば、東大京大レベルの問題でも7〜8割程度得点できるような学力を身につけられるでしょう。
これらの大学志望の生徒にはおすすめの一冊です。
『化学の新演習』の強み
『化学の新演習』を他の参考書と比べた強みを紹介していきます。
ハイレベルな演習ができる
本書の最大の強みは、ハイレベルな演習ができることです。
特に星3レベルでは、東大や京大入試で出題されるような超難問ばかりで、どれも一筋縄ではいきません。
これらの問題では、典型的な解法を組み合わせる発想力と化学反応の背景にある原理・原則の深い理解が問われます。
本書を通じてこれらの力を養うことで、難関医学部でも十分通用するほど化学を極められるでしょう。
入試頻出問題を網羅している
入試頻出問題を網羅していることも、本書の強みのひとつです。
本書は難問揃いである一方で、網羅系参考書としての役割も担っており、星1、2レベルの問題では入試頻出の典型的な解法パターンを網羅的に学ぶことができます。
さらに、改訂版では近年の入試傾向に合わせて収録している問題の見直しがされており、本書を使うことで難関大入試で頻出のテーマを漏れなく学べるでしょう。
マニアックな知識やテクニックを身につけられる
本書の強みとして、マニアックな知識やテクニックを身につけられることが挙げられます。
本書では他の問題集に比べて、計算が煩雑な理論分野の問題や、複数の分野の知識が統合された総合問題が幅広く収録されています。
そのため、標準的な問題集では得られない高度な知識や解法テクニックを身につけられるでしょう。
東京一工や難関医学部ともなると、標準問題では差がつかず、発展問題でどれだけ得点できるかが合否を分けます。
本書で学べるマニアックなテクニックを生かして、発展問題でも得点できる力を鍛えていきましょう。
『化学の新演習』の弱み
『化学の新演習』を他参考書と比べた弱みを紹介していきます。
解説が簡素
本書の最大の弱みは、解説が簡素である点です。
本書は、化学の学力レベルが一定以上の受験生を対象にしているため、理解に必要な原理・原則の解説が省略されています。
そのため、本書の解説だけでは背景にある反応の原理や公式の導出プロセスを学ぶことはできません。
改訂版では、解答・解説が大幅にページが増やされ改善されましたが、それでも問題が高度な分より詳しい解説が必要でしょう。
その際、『化学の新研究』や『鎌田の理論化学の講義』などの解説に特化した参考書を辞書代わりに用いるのがおすすめです。
問題の難易度が非常に高い
問題の難易度が非常に高いことも、本書の弱みのひとつです。
本書の強みであげたように、ハイレベルな演習ができる反面、ほとんどの人にとって難易度が高すぎるのも事実です。
本書では旧帝〜難関医学部レベルの問題が収録されており、少なくとも旧帝大レベルの問題をある程度解ける実力がないと到底太刀打ちできません。
そのため、「東京一工レベルの問題で8割以上取れる」人以外の、ほとんどの受験生にとって、難易度の高い演習書と言えるでしょう。
完成まで膨大な時間がかかる
本書の弱みとして、完成まで膨大な時間がかかることも挙げられます。
本書の問題数は全部で330題以上あり、1問20分で時進めたとしても、1周するのに110時間以上かかる計算です。
さらに、解法を定着させるために2〜3周することを考慮すると、それ以上の時間がかかることは確実でしょう。
そのため、全ての問題をやりきろうとするのではなく、「志望校合格のためには星1〜3のどのレベルまで解ける必要があるか」という基準で問題を取捨選択する必要があります。
『化学の新演習』の使い方
ここからは、『化学の新演習』の正しい使い方を紹介します。
STEP1:合格に必要な問題レベルを把握する
本書に取り組む際、まずは合格に必要な問題のレベルを把握してください。
本書では、各問題の難易度が星1〜3でレベル分けされており、星3の問題には難関医学部レベルの問題も含まれています。
こういった問題は、ほとんどの受験生にとって解く必要のない問題です。
まずは、自分の志望大学に出題されるレベルと星1〜3の問題のレベルを照らし合わせて、解けるようになるべき問題レベルを把握する必要があるでしょう。
STEP2:やるべき問題レベルを全て解く
やるべき問題レベルを把握したら、STEP1で見定めたレベルの問題を一通り全て解いていってください。
例えば、既に重要問題集を完璧に終えた人であれば本書では星3の問題だけを全て解く、といった形で進めていきましょう。
この時の進め方は、以下の手順を参考にするのがおすすめです。
- 問題を見て方針を立てる
- 1分考えてもわからない問題はすぐに解説を読む
- 自力で解けた問題には〇、解けなかった問題には×をつける
- 決めたレベルの問題全てについて1〜3をやる
STEP2では、自分で決めたレベルの問題を1周し、自分の苦手な傾向を洗い出すのが目的です。
STEP3:間違えた問題を復習する
STEP3では、STEP2で解けなかった問題を重点的に復習していきましょう。
具体的には、解説を読んでも理解できなかった問題は、教科書や講義本に立ち返って条件や反応の見落としがないかチェックするのが大切です。
本書の問題は、どれもレベルの高いものばかりなので1ど復習しただけでは完璧に理解するのは難しいかもしれません。
そういった問題も2周目、3周目と繰り返す中で理解が深まっていくので、×印をつけた問題を何度も復習していきましょう。
最終的に、自分できめたレベルの問題を8割以上解けるようになることを目標にしてください。
『化学の新演習』で1問にかける時間
新演習に収録されている問題は、一問あたりの分量も多く、解答し終わるのに相応の時間がかかります。
一方で、一問に時間をかけすぎるのは効率が良いとは言えません。
以下のようにレベルごとの所要時間を参考にするのがおすすめです。
・星1
1問あたり15分を目安に進めてください。
星1では、入試標準レベルの問題が中心に収録されており、本番でもあまり時間をかけるような問題ではありません。2周目以降はスピードアップを意識して取り組んでみましょう。
・星2
1問あたり25分を目安に進めてください。星2の問題は、難関大で出題されるような難問ばかりなので、本番でも通用する得点力を磨くことができます。こちらも2周目以降はスピードアップを意識して取り組んでみましょう。
・星3
1問あたり35分を目安に進めてください。星3ともなると、東大京大入試の中でも難問とされる問題や、難関医学部の問題が収録されているので、じっくり考え抜く必要があります。
一問解き終えるのに大変時間がかかるので、2周目以降は解答の方針を立てるだけに絞って取り組むのも良いでしょう。
『化学の新演習』に関する注意点
ここでは、本書に取り組む時の注意点を紹介します。
この注意点を見ておかないと、自分にあっていない参考書で効率の悪い勉強をしてしまう可能性が高いです。
以下の点に気をつけましょう。
本書に取り組む前に実力がいる
本書に関する注意点として、本書に取り組む前に実力をつけておく必要があることが挙げられます。
本書は、入試標準〜超難関大レベルの問題が収録されているので、入試基礎レベルまでの知識と解法を事前に身につけないといけません。
それらがないまま取り組んでも、解説を見るだけで消化不良に陥る可能性が高いです。
一つの目安として、『化学の重要問題集』の問題を8割程度解けるようにしておくと、本書に取り組んでも十分対応できるでしょう。
全てをやりきろうとしてはいけない
本書に取り組む際に、全てをやりきろうとしてはいけないことにも注意が必要です。
例えば、本書の星3レベルの問題は超難関大レベルなので、必ずしも全員が解けるようになる必要はありません。
志望校によっては星2までで十分な場合もありますし、限られた時間の中では他の苦手強化を優先すべき場合もあります。
本書を完璧に仕上げること自体が目的になるのは本末転倒なので、あくまで志望校合格のための手段として、取捨選択して本書を活用しましょう。
他の講義本を併用する必要がある
本書では、他の講義本を併用する必要があることにも注意してください。
本書の解説は簡素なだけに、解説だけでは解法をマスターするのが難しい問題もあるでしょう。
そのため、他の講義本を併用する必要があります。
教科書で確認しても良いですが、教科書のレベルと問題のレベルがかけ離れていて理解が難しい場合があります。おすすめなのは姉妹本である『化学の新研究』です。
本書の問題と対応した解説が載っているので、ぜひ活用してみてください。
『化学の新演習』の前におすすめの参考書
ここからは『化学の新演習』の前に使うと効果的な、おすすめの参考書を解説していきます。
重要問題集
入試標準レベルの典型問題を網羅している問題集です。
特に、国公立大学の入試問題で頻出の問題が揃っており、本書をやり込めば旧帝レベルの問題でも合格点を出せる学力を身につけられるでしょう。
入試発展レベルの難問も収録しており、新演習の星3の問題への橋渡し的な使い方ができます。
本書は、筆者が受験生時代にやり込んだ参考書の一冊で、入試化学はこれ一冊で完成させることができました。
セミナー化学

教科書傍用問題集の一つで、基礎〜入試標準レベルまで幅広い問題を扱っています。
本書一冊で、学校の定期テストレベル〜共通テスト・GMARCHレベルの問題まで対応できるでしょう。
『化学の新演習』に取り組むことを考えると、巻末の発展問題を含めてほぼ全て解けるようにしておくと良いです。
化学の新標準演習
『化学の新演習』と同じ著者による、難易度が易しめの問題集です。
入試標準〜難関大レベルまでの問題を幅広く扱っており、セミナー化学と新演習のちょうど間に位置する問題集と言えるでしょう。
本書の問題を全てマスターした後に、新演習で星3の問題に取り組むと段階的にレベルを上げながら学習できるのでおすすめです。
『化学の新演習』の後におすすめの参考書
本書を終えた人は、過去問演習やより難易度の高い問題が収録されている参考書に取り組んでください。
具体的には、以下の『共通テスト・センター試験の過去問』、『現代文単語』の2冊がおすすめです。
志望大学の過去問
新演習まで参考書をやり込んだ後は、志望校の過去問演習に専念することをおすすめします。
新演習で得た知識・解法を実戦形式でアウトプットしていく過程で、志望校特有の出題傾向や時間配分に慣れていくのが目的です。
特に東大・京大など志望の場合、25年分もの過去問を繰り返し解くことが最も合格への近道とも言われているので、最終仕上げは実際の入試問題で行いましょう。
『化学の新演習』についてのよくある質問
ここからは、本書について受験生からよく質問される点について答えていきます。
重要問題集とどちらがいいですか?
多くの受験生にとって、まずは重要問題集に取り組んだ方が良いでしょう。
本書が本当に必要になるのは、東大京大志望で化学を得点源にしたい人や難関医学部を志望する一部の人のみだからです。
重要問題集では、厳選された入試問題を網羅しており、入試に対応するための基礎力をつけるのに適しています。
まずは、重要問題集で入試標準レベルの問題をマスターしてから、それでも足りない場合は難問演習を本書で補うのが良いでしょう。
新研究との違いはなんですか?
『化学の新研究』は解説メインの講義本、『化学の新演習』は演習メインの問題集という違いがあります。
どちらも同じ著者の参考書ですが、その用途は全く違うと言えます。
特に、新研究は知識面の網羅性に優れており、各分野の原理やその背景知識まで深く理解できるでしょう。
新演習の解説だけで理解できない分野を新研究で確認する、相互補完的な使い方がおすすめです。
旧帝レベルで新演習は難しいですか?
東大京大以外の旧帝志望の受験生にとって、本書は難しいと言えるでしょう。
東大京大を除く旧帝大では、標準的な解法の組み合わせで解ける問題が多く、化学で合格点を取れるだけの学力を重要問題集のみで到達できます。
逆に、これらの大学を志望する人が無理に本書に手を出すことでオーバーワークに陥り、合格の可能性が下がることになりかねません。
本書に手を出す前に、重要問題集などで入試基礎〜標準レベルを完璧にマスターし、過去問で傾向を知ることが重要だと言えます。


