『橋元の物理をはじめからていねいに』は、東進ブックスが出版している物理を基礎から丁寧に解説した講義本です。
「問題となる物理現象では何が起きているか」、「公式の本質的な意味とは何か」といったレベルから図やグラフを用いてわかりやすく解説されています。
ただ、『橋元の物理をはじめからていねいに』が自分の学習スタイルと本当にあっているのか、どのように進めると学習効果が高いのかを見極めるのは難しいですよね。
この記事では、『橋元の物理をはじめからていねいに』の具体的な解説の内容や問題の難易度、効果的な使い方などを解説します。本の具体的な内容や問題の難易度を理解して、適切な参考書選びができるようになることを目指しましょう。
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『橋元の物理をはじめからていねいに』の商品情報
『橋元の物理をはじめからていねいに』の基本情報です。
| 価格 | 1,100円 |
| 科目 | 物理 |
| ページ数 | 240ページ |
| 出版社 | 東進ブックス |
| 目的 | 物理の事象や公式を理解し、汎用的な解法を扱える学力を身につける |
| 対象ユーザー | これから物理を始める人、物理に苦手意識がある人 |
| レベル | 日東駒専〜GMARCHレベル |
| 難易度 | やさしい〜普通 |
| 特徴 | 本書は、初学者でもわかりやすい解説で、図やグラフで直感的に理解できるという強みがある一方で、演習問題の難易度が低く演習量が不足してしまうといった弱みがあります。 |
『橋元の物理をはじめからていねいに』のレベル・到達できる偏差値
本書は日東駒専〜GMARCHレベルで、極めることで偏差値57.5〜60まで到達できます。高校物理の基本的な現象について、図やイラストを用いてわかりやすく解説されているので、現象を論理ではなくイメージで理解したい人にはおすすめと言えるでしょう。
本書は物理の基礎を理解するための講義本であるため、本格的に受験勉強に入る前に最低1周はしておく必要があります。志望校のレベル別におすすめの開始時期を以下に記載しているので、参考にしてみてください。
- 産近甲龍、日東駒専:高校3年4月
- 関関同立、GMARCH:高校2年の1月
- 早慶、旧帝大以上:高校2年の10月
『橋元の物理をはじめからていねいに』の強み
『橋元の物理をはじめからていねいに』を他の参考書と比べた強みを紹介していきます。
初学者でも解説がわかりやすい
本書の最大の強みは、初学者でも解説がわかりやすいことです。入試で問われる物理現象や公式の意味について、平易な語り口調で解説されています。
そのため、物理をこれから学習しはじめる人や、先取りで学習を進めている人でも容易に理解できるでしょう。特に、波動や熱力学、電磁気学といった概念の理解が難しい単元は、学校の授業だけでは理解できない人も多いはずです。
そういった単元も、本書を読めばスムーズに理解できるでしょう。
図やグラフで直感的に理解できる
図やグラフで直感的に理解できるのも本書の強みと言えます。入試で問われる物理現象について、具体的に何が起こっているのか、図やグラフで解説されています。
そのため、物理に苦手意識がある人でも、イメージとして直感的に理解しやすいでしょう。本書の背表紙に「物理はイメージだ!」とあるように、物理ではざっくりと現象の全体像を掴むのが非常に重要です。
問題を解いていて、物理現象のイメージが掴めない人は、ぜひ本書を手にとってみてください。
頻出の重要問題に取り組める
頻出の重要問題に取り組めるのも本書の強みです。本書の演習問題では、教科書〜入試基礎レベルの頻出かつ、重要な問題ばかりが収録されているので、汎用性の高い解法を身につけられるでしょう。
物理は、単元ごとにコアとなる汎用的な解法を身につけ、それらを様々な条件の問題に当てはめていくのが非常に重要な科目です。本書では、問題の条件からどの解法を選ぶべきかを、具体的なステップに分けて解説されています。
本書1冊で、汎用的な解法を身につけ、問題の条件に合わせて使い分ける能力を身につけられるでしょう。
『橋元の物理をはじめからていねいに』の弱み
『橋元の物理をはじめからていねいに』を他参考書と比べた弱みを紹介していきます。
問題が簡単すぎる
本書の最大の弱みは、問題が簡単すぎることです。本書の演習問題は、物理が苦手な人や初めて習う人が理解しやすいようにまとめられているので、どれも難易度は高くありません。
そのため、本書の演習問題だけで入試問題に太刀打ちできる学力を身につけるのは難しいと言えます。セミナーやリードαといった基礎的な問題集を併用し、それが終わったら、良問や名問といった入試標準レベルの問題集に取り組んでいってください。
演習量が少ない
演習量が少ないのも本書の弱みと言えるでしょう。物理現象のイメージを理解し最重要問題を解けるようになることを目的としているため、「圧力と浮力」や「仕事とエネルギー」といったテーマごとに数問あるだけです。
これだけでは演習量が十分とは言えません。本書の演習問題が解けたら、セミナーやリードαで同じ単元の問題に取り組み、演習量を積んでいきましょう。
『橋元の物理をはじめからていねいに』の使い方
ここからは、『橋元の物理をはじめからていねいに』の正しい使い方を紹介します。浪人時代に実際に本書を使用していた講師の話を元にしているので、ぜひ参考にしてみてください。
STEP1:まずは1周読む
STEP1として、まずは本書を1周通読しましょう。その際、一文一文を完璧に理解しておく必要はないので、ざっと全体感を掴むことを目標としてください。
「物理はイメージだ!!」と紹介されている通り、物理では何が起きているかを理解するのが非常に重要です。物理現象の理解さえできれば、後は適切な関係式を立てて解くだけだからです。
STEP1では、物理で最も重要な「現象の理解」ができるように読み進めてください。
STEP2:演習問題に取り組む
本書を1周読み終わったら、演習問題に取り組んでいきましょう。本書の演習問題は、教科書〜入試基礎レベルの問題が収録されており、講義部分を理解していれば簡単に解けるはずです。
じっくり考えるのではなく、わからなければすぐに解説を読んで頭に定着させていきましょう。具体的な進め方は、以下を参考にしてください。
- 解法の仮説を立てる
- 問題を解く
- 解説を見て、自分の仮説とギャップを確認する
- 見つけたギャップを解説に書き込む
STEP3:演習問題でつまづいた部分を読み返す
演習問題を一通り終えたら、演習問題でつまづいた部分を読み返しましょう。具体的には、STEP2で解説に書き込みをした問題について復習してください。問題文を見てすぐに解法が浮かばない場合は、講義部分まで戻って読み返すことが大切です。
書き込みをした問題全て解けるようになったらより難しい問題集に取り組んでいきましょう。その際、初見で解けない問題に出会ったら、本書の該当箇所で復習してください。
問題集を行き来して学習してこそ、本書の真価が発揮されます。
『橋元の物理をはじめからていねいに』で1講義にかける時間
本書の演習問題で1問にかける時間は、5〜10分です。本書で収録されている問題は、セミナーの基本問題〜発展例題レベルなので、10分以上時間をかけるべきではありません。
10分以上考えてもわからない場合は、解法のインプットができていない可能性が高いのですぐに解説と講義部分を読み返してみましょう。
これらの問題は、本番で出題されたら瞬殺しないといけないレベルなので、2〜3周目は問題をみた瞬間に解法と答えが頭に浮かぶことを目標としてください。
『橋元の物理をはじめからていねいに』に関する注意点
ここでは、本書に取り組む時の注意点を紹介します。
この注意点を見ておかないと、自分にあっていない参考書で効率の悪い勉強をしてしまう可能性が高いです。
以下の点に気をつけましょう。
より難しい問題集に取り組む必要がある
本書の最大の注意点は、より難しい問題集に取り組む必要があることです。物理の基礎知識の暗記や原理原則の理解を目的とした解説本であるため、演習問題の難易度は高くありません。セミナーやリードαで言えば基本問題〜発展例題レベルです。
本書を終えた後、すぐに過去問演習に入るのではなく、入試基礎〜標準レベルの問題集に取り組む必要があるでしょう。具体的には、物理のエッセンス→良問の風→名問の森→過去問という順序がおすすめです。
本書を何なく理解できた人は、いきなり良問の風や名問の森からスタートするのも良いでしょう。
受験期に入る前に1周しておく必要がある
本書の注意点として、受験期に入る前に1周しておく必要があります。物理の基礎固め用の講義本であるため、本格的に受験勉強する時期に始めているのでは遅いと言えます。受験期に入る前に最低1周はしておきましょう。
本格的な問題演習に入った時に、2周、3周と何度も読み返すことで、その単元の物理現象の本質と公式の意味が結びつき理解が圧倒的に深まります。
受験期に入ってからも何度も読み直さないといけない
本書に取り組む際、受験期に入ってからも何度も読み直さないといけないことに注意しましょう。ただ1周読むのではなく、演習問題でつまづいた時に読み返すことで、高い学習効果を得られます。
例えば、波動や熱力学といった分野はただ講義を読んで公式を暗記しただけでは、本質的な理解が難しいでしょう。問題演習を通して生じた疑問や暗記頼りな箇所を埋めていくことで、難問にも太刀打ちできる得点力が身につくのです。
そのため、1周読んで終わりではなく、問題演習の時に辞書代わりとして、何度も繰り返し読み返すのが重要です。
『橋元の物理をはじめからていねいに』と併用がおすすめの参考書
本書は物理現象や公式の意味を丁寧に解説しているので、受験勉強の一冊目に取り組むと良いでしょう。
ここからは『橋元の物理をはじめからていねいに』と併用すると効果的な、おすすめの参考書を解説していきます。
セミナー物理
教科書傍用問題集の一つで、物理の全単元について網羅しています。教科書レベルの基礎問題から入試レベルの標準問題まで幅広く収録されており、橋元の物理を一通り読み終わったら、プロセス→基本→発展→実践の順で取り組んでいきましょう。
発展や実践問題では、解説を読んでも理解が難しい問題もあると思うので、橋元の物理をもう一度読んで復習してください。
リードα
基本的な教科書傍用問題集で、内容や使い方はセミナー物理と同じです。セミナー物理と異なる点として、章ごとに基本事項が整理されており物理が苦手な人に特におすすめの一冊です。
橋元の物理で読んだ範囲の問題に取り組み、基礎固めをしておくことで、エッセンスや良問の風といった入試基礎レベル以上の問題集で躓きにくくなるでしょう。
『橋元の物理をはじめからていねいに』の後におすすめの参考書
本書を終えた人は、過去問演習やより難易度の高い問題が収録されている参考書に取り組んでください。
具体的には、以下の『物理のエッセンス』、『良問の風』、『名問の森』がおすすめです。
物理のエッセンス

良問の風や名問の森と同じ著者の解説本で、講義と問題がコンパクトにまとまっている一冊です。入試物理の全範囲について入試基礎レベルの問題が収録されており、橋元と良問の間のギャップを埋められるでしょう。
一方で、講義部分では橋元と被っている箇所も多いので、講義部分はさらっと流し読みし、問題部分だけ重点的に取り組むのもおすすめです。
良問の風
入試頻出の標準的な問題が幅広く収録されており、汎用的な解法パターンを身につけられる一冊です。本書だけで入試基礎レベルの問題を全て解けるようになるので、時間が限られている現役生にうってつけの問題集と言えます。
関関同立やGMARCHを目指す受験生は本書までで十分ですが、より難しい大学を受ける人は名問の森に進んでください。
名問の森

物理のエッセンスや良問の風と同じ著者の問題集で、より高度な解法パターンを身につけられます。基本的な構成は良問の風と同じですが、難易度が高めな良問が多数収録されており、物理の学力を入試レベルまで一気に引き上げてくれる参考書です。
難関大合格者から評価の高い問題集でもあり、京大に合格した理系の同級生は100%本書を使っていました。
『橋元の物理をはじめからていねいに』についてのよくある質問
ここからは、本書について受験生からよく質問される点について答えていきます。
『漆原の物理が面白いほどわかる本』とどちらがいいですか?
結論、目的に合わせて選びましょう。
2冊とも物理の講義本ではありますが、橋元が「最重要問題を解けるようになること」に重点をおいているのに対して、漆原は「物理を基礎の基礎から理解できるようになること」に重点をおいて解説されています。
そのため、物理を根本から理解したい人は漆原を、物理の問題を解けるようになりたい人は橋元を選びましょう。
『宇宙一わかりやすい高校物理』とどちらがいいですか?
自身の学習スタイルによって決めるのがおすすめです。宇宙一も物理の講義本ではありますが、確認問題が豊富で網羅性が高いという違いがあります。
そのため、最重要問題だけに取り組みたい人は橋元を、最重要問題だけでは不安で典型問題にも取り組みたい人は宇宙一を選びましょう。
ただし、どちらの参考書を選んでも演習量が足りないのには変わりないので、セミナーやリードαといった教科書傍用問題集に取り組むのは必須です。


