『良問の風』は、河合出版が出版している物理の標準的なレベルの問題集です。
物理の入試基礎〜標準レベルの頻出問題が網羅されており、本書を極めることで典型的な解法パターンをマスターできます。
ただ、『良問の風』が自分の学力レベルに本当にあっているのか、どのように進めると学習効果が高いのかを見極めるのは難しいですよね。
この記事では、『良問の風』の問題の難易度や解説の詳しい内容、効果的な使い方などを解説します。本の具体的な内容や問題の難易度を理解して、適切な参考書選びができるようになることを目指しましょう。
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『良問の風』の商品情報
『良問の風』の基本情報です。
| 価格 | 1,100円 |
| 科目 | 物理 |
| 問題数 | 154題 |
| 出版社 | 河合出版 |
| 目的 | 入試問題を解くための土台となる基礎力を身につける |
| 対象ユーザー | 難関大学を志望する理系の人 |
| レベル | GMARCHや地方国公立 |
| 難易度 | 普通 |
| 特徴 | 本書は、典型問題が網羅されており解説が丁寧という強みがある一方で、全体の問題数が少なく、さらに論述問題も少ないという弱みもあります。 |
『良問の風』のレベル・到達できる偏差値
本書は、GMARCHや関関同立などの難関私大〜地方国公立大レベルです。本書を極めることで、偏差値62.5〜65まで到達できます。
本書は入試基礎レベルの典型問題を網羅しているので、これらの大学を目指す受験生は、過去問演習に入る前の参考書として用いると良いでしょう。
一方で、早慶や旧帝大以上の大学を目指す受験生は、本書の後により難しい問題集に取り組む必要があります。そのため、受験期が始まる前には、本書を完成させておきたいです。
志望校のレベル別におすすめの学習時期を以下に記載しているので、参考にしてみてください。
- 産近甲龍、日東駒専:高校3年の10月
- 関関同立、GMARCH、地方国公立:高校3年の7〜8月
- 早慶、旧帝大以上:高校2年の3月
『良問の風』の強み
『良問の風』を他の参考書と比べた強みを紹介していきます。
典型問題を網羅している
本書の最大の強みは、典型問題を網羅している点です。本書の収録問題数は154問題と多くは無いものの、入試頻出の、本当に質の高い良問が揃っていると言えるでしょう。
入試物理では、あらゆる問題が典型問題の組み合わせで構成されており、どんなに複雑で難しい問題でも、典型的な解法パターンの組み合わせで解けます。
本書を通して、入試で問われる解法パターンをマスターし、難問を解くための土台となる基礎力を磨いていきましょう。
解説が丁寧でわかりやすい
解説が丁寧でわかりやすいのも本書の強みと言えます。問題と解答・解説が別冊になっており、図やグラフを用いて要点がわかりやすく整理されています。
そのため、解答に至るまでの解法のプロセスを一つ一つ確認することができるでしょう。
物理では化学や生物と比べて、より論理的な思考プロセスを踏んで学習するのが重要な科目です。本書の解説を活かして、「この条件があるからこの式」「この式だからこの法則がいえる」というように順序立てて効果的に学んでいきましょう。
物理のエッセンスや名問の森と対応している
物理のエッセンスや名問の森と対応しているのも本書の強みの一つです。実は、これらの3冊は全て同じ著者による参考で、基礎→標準→発展と段階的にレベルを上げていける設計となっています。
本書の解説の中にも「エッセンス参照」と記載されている箇所もあり、基礎的な知識や理解をエッセンスに立ち返って確認できるでしょう。
また、本書を完成させてから名問の森に取り組むことで、問題が難しすぎて手が動かないといった事態を避けられます。
シリーズ3冊を通して、系統だった学習ができるでしょう。
『良問の風』の弱み
『良問の風』を他参考書と比べた弱みを紹介していきます。
問題数が少ない
本書の最大の弱みは、問題数が少ない点です。論述問題を合わせても154題と、短期間で一気に仕上げられる一方で、演習量が不足してしまいがちです。特に、浮力や交流の問題など、最頻出では無いが差がつく単元の問題量が十分ではありません。
そのため、本書の問題を何周も解くのは前提として、追加の問題演習が必要でしょう。その際、早慶や旧帝大以上の大学を目指す受験生は、名問の森や重要問題集などのより難しい問題集を使うのがおすすめです。
論述問題が少ない
論述問題が少ないのも、本書の弱みと言えるでしょう。巻末に論述問題がまとめて収録されていますが、全体に占める割合は多くありません。
近年、二次試験で論述式の問題を導入する大学も増えてきており、そういった大学を志望する受験生にとって対策は必須です。しかし、本書の論述問題はあくまで基礎的な現象や公式の理解の確認が中心で十分とは言えません。
本書の基本的な説明問題をマスターした後には、他の問題集や過去問で長めに記述答案を作る練習をすると良いでしょう。
『良問の風』の使い方
ここからは、『良問の風』の正しい使い方を紹介します。
STEP1:分野ごとに1周する
まずは、力学や波動、熱力学など分野別に問題を1周しましょう。
一度に全分野をやろうとするのではなく、単元ごとに区切って学習することで、様々な物理現象を頭の中で整理しながら進められます。各単元を進める際、以下の手順で進めるのをおすすめします。
- まとめ知識を確認する
- その分野の全ての問題を解く
- 解けなかった問題には印をつける
- 解説を見て、解法のプロセスを確認する
STEP2:分野ごとに復習する
各分野を1周し終わったら、分野ごとに間違えた問題の復習を行いましょう。
STEP1で印つけた問題について、解説で学んだ解法プロセスを頭に浮かべながら復習してください。それでも間違えた問題については、印を消さずに新しい印をつけるのがおすすめです。自分の特に苦手な問題の傾向を可視化できるからです。
印のつけた問題について全て解けるようになったら、その単元の問題を一通り見て、解法が定着しているかをもう一度確認しましょう。全ての問題の解法が頭に浮かぶようになったら、次の分野に進んでOKです。
STEP3:全ての分野に取り組む
STEP3では、STEP1、STEP2の手順で全ての分野について取り組んでいきましょう。
全分野を学習し終えたら、もう一度全体を通して総復習をするのがおすすめです。解法を忘れてしまった問題を発見できるだけでなく、解答スピードも向上させられます。
良問の風はそれほど量も多くはないので、1日5問ペースで進めれば1ヶ月ほどで1周が終わるでしょう。1日5問であれば、1問あたり20分で進めても100分で終わる計算となり、多忙な高校生でも十分できるペースです。
物理では、解法をパターン化して定着させていくのが重要です。ぜひ、全体を通した総復習を最後にしてください。
『良問の風』で1問にかける時間
結論、1問あたり10〜15分以内に解き終えましょう。本書に収録されている問題は、入試基礎〜標準レベルであり、本番でも15分以内に解くべき問題ばかりです。
それ以上の時間がかかっている場合は、必要な解法を忘れてしまっている、もしくは知らない可能性が高いので、すぐに解答解説を確認するのがおすすめです。最終的には、10分以内に解き終わる事を目標にして、スピードを意識して進めていきましょう。
『良問の風』に関する注意点
ここでは、本書に取り組む時の注意点を紹介します。
この注意点を見ておかないと、自分にあっていない参考書で効率の悪い勉強をしてしまう可能性が高いです。
以下の点に気をつけましょう。
初学者向きではない
本書の注意点として、初学者向きでは無いことが挙げられます。本書は、セミナーやリードαを終えて、公式の意味や使い方を一通り理解している人が対象です。
そのため、物理の基礎知識が全くない状態で本書に手を出すのはおすすめできません。まずは、物理のエッセンスや教科書傍用問題集で基礎固めをしてから、本書に取り組みましょう。
本書に取り組む具体的な基準として、本書に取り組む前に、共通テストレベルの問題で6割以上解ける得点力を身につけてください。
より難しい問題集に取り組む必要がある
より難しい問題集に取り組む必要があることも本書の注意点です。本書では入試標準レベルまでの問題しか収録されていないので、早慶や旧帝大志望者はより発展的な問題集が必要でしょう。
これらの大学では、典型的な解法パターンを適用しただけでは解けないような複雑な問題ばかり出題されます。名問の森などのハイレベルな問題集を通して、こうした問題に太刀打ちできる得点力を身につけていきましょう。
何周もする必要がある
本書に取り組む際、何周もする必要があることに注意してください。これは本書に限らず全ての問題集に言えるのですが、問題集は繰り返し復習して完璧に仕上げるのが大切です。
特に本書では、入試基礎〜標準レベルの典型問題ばかりで、どの問題も難なく解けるようになる必要があります。
問題の解法を徹底的に定着させるためにも、全ての問題を2周以上、間違えた問題は3周以上解いてください。何度も同じ問題を解くことで、初見の問題を見ても自然と解法が浮かぶようになり、解答スピードも早くなっていくでしょう。
『良問の風』の前におすすめの参考書
ここからは『良問の風』の前に使うと効果的な、おすすめの参考書を解説していきます。
セミナー物理
教科書傍用問題集の一つで、物理の全単元について網羅しています。
教科書レベルの基礎問題から良問の風に匹敵するような問題まで幅広く収録されているので、こちらで演習を積んでから良問の風に取り組むと、段階的に学習できるでしょう。
リードα
基本的な教科書傍用問題集で、内容や使い方はセミナー物理と同じです。
セミナー物理と異なる点として、章ごとに基本事項が整理されており、物理が苦手な人に特におすすめの一冊です。良問の風に取り組む前に本書で基礎固めをしておくことで、良問の風で躓きにくくなるでしょう。
物理のエッセンス

良問の風や名問の森と同じ著者の解説本で、講義と問題がコンパクトにまとまっている一冊です。物理の基礎的な範囲が網羅的に解説されており、良問の風の問題と対応した解説も魅力的です。
物理が不安な人は教科書とは別に本書を持っておくことで、わからない問題が出てきた時に辞書代わりに使えるので学習効果が高いでしょう。
『良問の風』の後におすすめの参考書
本書を終えた人は、過去問演習やより難易度の高い問題が収録されている参考書に取り組んでください。
具体的には、以下の『名問の森』、『志望する大学の過去問』の2冊がおすすめです。
名問の森

物理のエッセンスや良問の風と同じ著者の問題集で、より高度な解法パターンを身につけられます。
基本的な構成は良問の風と同じですが、難易度が高めな良問が多数収録されており、物理の学力を入試レベルまで一気に引き上げてくれる参考書です。筆者は本書一冊で物理を仕上げ、定期テスト39点から京大実践偏差値60まで伸ばすことができました。
志望する大学の過去問
GMARCHや地方国公立を目指す受験生は、良問の風を終えたら、志望大学の過去問演習に取り組みましょう。実際の入試問題に触れることで、志望大学の出題傾向や問題形式の癖がわかります。
他教科に比べて物理は特に、大学によって出題の仕方が全く異なります。志望大学の傾向を知り尽くすことで、その大学に特化した得点力を身につけられるでしょう。
『良問の風』についてのよくある質問
ここからは、本書について受験生からよく質問される点について答えていきます。
名問の森とどちらがいいですか?
結論、志望校レベルに合わせて選ぶのがおすすめです。本書が入試基礎〜標準レベルの問題を収録しているのに対して、名問の森に収録されている問題は入試標準〜発展レベルです。
志望校がGMARCHや地方国公立である受験生は、名問の森に手を出すよりもむしろ本書を何周もしてマスターする方が良いでしょう。逆に、早慶や旧帝大以上を受ける受験生は、名問の森を完成させるまで取り組む必要があります。
これらの大学を目指す人でも、いきなり名問の森に手を出すのではなく、本書でワンクッションおいてください。オーバーワークにならず、解法暗記に陥る事態を避けられるからです。
1日何時間進めるべきですか?
1日あたりの勉強時間は、勉強時間ではなく問題数で決めるのをおすすめします。
目安として、1日5問ペースで進めていくと良いでしょう。このペースであれば、1周を1ヶ月で終えられるので、2〜3周すると考えると最適と言えます。あくまで目安ですので、スケジュールや目標完了時期によって調整してください。
注意点として、「1日1題進める」というのはあまりに遅すぎます。これでは1周するのに5ヶ月以上かかり、学習効果が低いです。


