『1対1対応の数学』は、東京出版が出版している入試典型問題を集めた問題集です。
入試基礎〜標準レベルの典型問題を通して、汎用性の高い解法パターンを習得でき、難関大入試レベルの実戦力を身につけられます。
ただ、『1対1対応の数学』が自分の学力と本当にあっているのか、どのように進めると学習効果が高いのかを見極めるのは難しいですよね。
この記事では、『1対1対応の数学』の問題の難易度や解説の内容、効果的な使い方などを解説します。本の具体的な内容や問題の難易度を理解して、適切な参考書選びができるようになることを目指しましょう。
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『1対1対応の数学』の商品情報
『1対1対応の数学』の基本情報です。
| 価格 | 数1:1,320円 数2:1,760円 数3:1,760円 数A:1,320円 数B:1,210円 数C:1,650円 |
| 科目 | 数学 |
| 問題数 | 数1:103題 数2:168題 数3:150題 数A:108題 数B:118題 数C:不明 (数c以外は、新訂版の問題数) |
| 出版社 | 東京出版 |
| 目的 | 標準的な問題演習を通じて、難関大入試レベルの実戦力を身につける |
| 対象ユーザー | 入試標準レベルの問題をスラスラ解けるようになりたい人 |
| レベル | 早慶、旧帝大レベル |
| 難易度 | やや難しい |
| 特徴 | 本書は、典型問題を体系的に、かつ短期間で学べるという強みがある一方で、網羅的な学習はできず、全6冊やるには分量が多すぎるという弱みがあります。 |
『1対1対応の数学』のレベル・到達できる偏差値
本書は早慶や旧帝大レベルで、本書を極めることで、偏差値67.5〜70まで到達可能です。入試標準レベルの重要問題を体系的に学べます。
いきなり入試標準レベルの問題に取り組むのは難しいため、チャート式やフォーカスゴールドの網羅的参考書で入試基礎レベルの問題まで解けるようになっておきましょう。
志望校のレベル別におすすめの開始時期を以下に記載しているので、参考にしてみてください。注意点として、これらの時期に網羅系参考書での基礎固めが終わっていない人は、まず基礎固めを優先的に終わらせましょう。
- 早慶、旧帝大:高校3年の4月
- 東京一工:高校2年の12月
『1対1対応の数学』の強み
『1対1対応の数学』を他の参考書と比べた強みを紹介していきます。
典型問題を体系的に学べる
本書の最大の強みは、典型問題を体系的に学べることです。各単元について入試標準レベルの典型問題が整理されており、まず例題で解法をインプットした後に、類題の「演習問題」で解法の理解をチェックできるでしょう。
数学では、様々な解法のつながりを意識しながら体系的に覚えていくのが非常に重要な科目です。本書で解法を体系的に学ぶことで、入試レベルの実践力を身につけてください。
解説がわかりやすい
解説がわかりやすいのも本書の強みと言えるでしょう。本書では、各問題についてわかりやすい解説がついており、「どのように解法を発想するに至ったか」「どのように論理展開していくか」を学べます。
本書の問題は入試標準レベルなので、初見では解けない問題も多いです。本書の解説を見て、解法をプロセスごとに理解するよう意識しながら解法をインプットしていきましょう。
短期間で学習できる
本書の強みとして、短期間で習得できることも挙げられます。1冊あたりの問題数が100題ほどで、集中して取り組めば2〜3週間ほどで1周できます。間違えた問題を何度も解き直したとしても、1ヶ月で完成できるでしょう。
そのため、苦手な分野に限定して取り組みたい人にはおすすめです。ただし、数2は問題数が170題以上と多く問題の難易度も高めなので、時間がかかることに注意してください。
『1対1対応の数学』の弱み
『1対1対応の数学』を他参考書と比べた弱みを紹介していきます。
網羅的な学習はできない
本書の最大の弱みは、網羅的な学習ができないことでしょう。入試頻出の典型問題や解法の汎用性が高い問題に限定して収録されています。
本書は入試で重要度の高い問題に限定して、標準レベルの演習を積むための問題集です。そのため、数学の基礎〜標準レベルの問題を網羅的に学習したい人には不向きと言えるでしょう。
本書に取り組む前にまずは、青チャートやフォーカスゴールドなどの網羅系参考書で、基礎固めをしておいてください。
全6冊やるには分量が多すぎる
全6冊やるには分量が多すぎるのも、本書の弱みと言えます。
1冊あたりの問題数は多くありませんが、全6冊を合わせると700題以上となります。1問1問の難易度も高いので、これらの問題を全て解くには相応の時間と労力がかかるでしょう。
そのため、苦手な単元や志望大学の頻出の単元に絞って取り組むのがおすすめです。実際、筆者も京大で毎年必ず出る数1a分野だけに絞って取り組みました。
『1対1対応の数学』の使い方
ここからは、『1対1対応の数学』の正しい使い方を紹介します。
STEP1:例題に取り組む
本書の使い方として、まずは例題に取り組みましょう。例題では、重要な解法のインプットが目的です。本書に収録されている問題は入試標準レベルと難しいので、例題であっても初見で解けない問題もあるでしょう。
その際は、解答をみて解法をインプットしてから、チャート式などの網羅系問題集で類題はないか確認してみてください。自分の苦手な問題の傾向を明確にできます。
STEP2:演習問題に取り組む
例題が終わったら、その類題の演習問題に取り組んでいきましょう。演習問題では、難関大学の入試問題が収録されており、問題のレベルは高いと言えます。
問題をみて解法がパッと思い付かない時は、例題の解説を見てokです。ただ、演習問題の解説を見るのは、例題の解説を見てもわからない時だけにしましょう。最初から演習問題の解説を見てしまうと、解法の丸暗記をしてしまいがちで、学習効果が低いからです。
本書は問題集でありながら、入試標準レベルの解法のインプット用の参考書です。初見で解けなかった問題には必ず印をつけておきましょう。
STEP3:間違えた問題とミニ講座に取り組む
例題と演習問題を1周解き終えたら、印のついた問題の復習に取り組んでください。その際、解答解説を見ながら、どの条件から解法が思いつくのかを意識して解き直しましょう。
解法をパターン化できれば、初見の問題への対応力が身につき、得点が一気に伸びていきます。
何も見ずに解けるようになったら次の問題に進んでください。全ての例題と演習問題を仕上げたら、ミニ講座にも取り組みましょう。
ミニ講座では、頻出ではなくても合否を分けるような重要問題が収録されており、飛ばさずに取り組むのがおすすめです。
『1対1対応の数学』で1問にかける時間
例題15分、演習問題20分を目安にしてください。
本書は、例題でも入試基礎〜標準レベルの問題なので、初見で解けない問題も多いはずです。10分考えてもわからない時は、問題の核となる解法を知らない可能性が高いので、すぐに解説を見ましょう。2周目には、以下に無駄な計算を省いて、素早く解けるかを考えて解いていくのがおすすめです。
演習問題は、入試標準レベルの問題であり、同じページの例題の類題となっています。初見では、何も見ずに解くのは難しいと思うので、例題の解法を見ながら進めていくのも良いでしょう。2周目以降は、問題のどの条件から解法を思いついたのかを意識しながら、スピーディーに解いていってください。
『1対1対応の数学』に関する注意点
ここでは、本書に取り組む時の注意点を紹介します。
この注意点を見ておかないと、自分にあっていない参考書で効率の悪い勉強をしてしまう可能性が高いです。
以下の点に気をつけましょう。
基礎固めをしておく必要がある
本書の最大の注意点は、本書に取り組む前に、基礎固めをしておく必要があることです。本書に収録されている問題はどれも入試標準レベルの問題ばかりで、初見では解くのが難しいものも多いです。
そのため、基礎固めをしてからでないと、オーバーワークになり十分な学習効果を得られない可能性が高いでしょう。
まずは、網羅系の問題集を使って入試基礎レベルの問題まで難なく解けるようになってから本書に取り組んでください。
分野を絞って取り組まないといけない
分野を絞って取り組まないといけないのも本書の注意点です。
6冊全てやりきろうとすると、相当な時間がかかるのでおすすめできません。1周では定着しづらく2〜3周すると考えると、1冊あたり1ヶ月ほどかかります。これでは、全6冊終えるのに半年もかかり、他教科の学習が遅れてしまう可能性が高いです。
そのため、苦手な単元や志望する大学で毎年必ず出ている分野に絞って取り組むのが良いでしょう。
1冊ごとに進める必要がある
本書に取り組む際、1冊ごとに進める必要があるので注意してください。
本書では、一つの分野に対して典型問題が体系的に整理されて収録されています。そのため、複数の分野を並行して進めるよりも、一つの分野ごとに集中して取り組んだ方が定着しやすいと言えます。
限られた時間の中で最高の学習効果を得るためにも、まずは1冊を完璧に仕上げてから次の1冊に取り組むように心がけましょう。
『1対1対応の数学』の前におすすめの参考書
ここからは『1対1対応の数学』の前に使うと効果的な、おすすめの参考書を解説していきます。
青チャート

言わずと知れた、網羅系参考書の金字塔です。教科書レベルの問題から入試基礎レベルの問題まで網羅的に整理されており、本書1冊だけで基礎固めを終えられるでしょう。
数1a、数2b、数3cと三冊に分けられており、全てを終えるには相当な時間がかかります。受験期に入る高3の春までには仕上げておきましょう。
標準問題精講
入試基礎レベルの典型問題が幅広く収録されている問題集です。頻出の重要問題が綺麗にまとめられているものの、青チャートやフォーカスゴールドと被っている問題も多いです。
そのため、網羅系参考書を終えたけどまだ不安がある人にはおすすめできる問題集と言えるでしょう。
『1対1対応の数学』の後におすすめの参考書
本書を終えた人は、過去問演習やより難易度の高い問題が収録されている参考書に取り組んでください。
具体的には、以下の『志望大学の過去問』、『理系数学の良問プラチカ』、『新数学スタンダード演習』の3冊がおすすめです。
志望大学の過去問
早慶や地方国公立を志望する人は、1対1対応の数学を終えたらすぐに過去問演習に入ってokです。無理により難しい参考書に取り組もうとすると、逆にオーバーワークになっててしまう可能性が高いでしょう。
1対1対応で学んだ解法がきちんと定着していれば、過去問であっても解ける問題の方が多いはずです。過去問演習を通して出題傾向や問題形式の癖を把握することで、実践力を身につけていきましょう。
理系数学の良問プラチカ
旧帝大の理系を志望する人におすすめの問題集で、入試標準〜発展レベルの高度な問題演習ができます。1問1問の難易度が高く、完成させるまでに時間がかかる一方で、本書を終えた人は、過去問がスラスラ解けるようになるはずです。
特に旧帝大以上や医学部を志望する人や、数学を得点源にしたい人はぜひ取り組むべき参考書と言えるでしょう。
新数学スタンダード演習

入試発展レベル〜大学レベルの問題が収録されている超ハイレベルな問題集です。収録されている問題は入試発展レベルで、どの問題も一筋縄ではいきません。東大京大で数学を得点源にしたい人や、難関医学部を志望する受験生はとりくむと良いでしょう。
一方で、それ以外のほとんどの受験生にとってはレベルが高すぎるので、本書をスルーして過去問演習に取り組んでください。
『1対1対応の数学』についてのよくある質問
ここからは、本書について受験生からよく質問される点について答えていきます。
6冊全部やるべきですか?
結論、6冊全部はやらなくて大丈夫です。シリーズ全部をやりきるには大変な時間がかかり、挫折しやすくなるからです。
それよりも苦手な単元や志望大学で頻出の単元に集中して取り組んだ方が、得られる学習効果が高くなり、かえって合格可能性は高まるでしょう。実際、筆者も京大頻出の数1a分野に絞って取り組んだ結果、本番で数1aの問題は全て完答できました。
他の科目についても言えますが、自分にとって必要な2,3冊を完璧にした方が学力は上がりやすいので、ぜひ戦略的な取捨選択をしてみてください。
三訂版と新訂版の違いはありますか?
三訂版と新訂版の間で、問題の内容や解説に大きな違いはありません。三訂版は新課程対応で、新訂版は旧課程に対応しているという違いがあるだけです。
ただ、ベクトルと二次曲線、複素数平面が新しく数cにまとめられているので注意してください。志望する大学の出題範囲を把握してから、自分の苦手と出題傾向に合わせた1対1対応を選びましょう。


