今回は、浪人を経て京都大学総合人間学部に合格したスタペディア編集部の青野に、受験生時代を振り返ってもらいました!
彼は、「理系と文系の両方で京大総人を受験」という珍しい受験歴を持っています。
本記事では、「京大総人不合格体験記」ということで、現役時代の受験について語ってもらいました。
この記事を読むと以下のようなことがわかります。
- 時間がない中で成績を伸ばす勉強法
- 総人理系志望の受験生がどのような時間配分で勉強していたか
- 不合格してしまう人の原因
この記事を書いた人
氏名:青野蒼太
大学・学部:京都大学総合人間学部
学年:2回生
出身地:愛知県
部活(高校):ハンドボール
彼は、2023年度に作成された、総合人間学部公式の紹介映像「総人狼」に出演しています。京大志望や総人志望の方は、ぜひご覧ください。
受験情報
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受験生活を一言で表すと
受験期を一言で表すと、「ウルトラマラソン」です。
後ほど詳しく書くのですが、私は、受験勉強をマラソンのようなものだと考えることをおすすめしています。受験は長期戦であり、低調なときやスパートをかけるときなど、上がり下がりがありつつも、ある程度のペースを保つのが大切だからです。
その上で、浪人してさらに1年かかったこと、文転してゴールまでの道のりが変わったことなどを踏まえて、「ウルトラママラソン」という言葉がピッタリだなと思います。
モチベーショングラフ
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高1〜高2
高校受験を終えて満足してしまったのか、高校に入ってから勉強量が減ってしまいました。受験はまだ先のこと、まだ大丈夫と気楽に構えていた部分がありましたね。
今振り返ると、全然勉強してなかったです。学校の課題をギリギリやり終えるかやり終えないか…といったぐらいの勉強量でした。
受験に向けて着実に勉強するよりは、とにかく学校の課題を終わらせること、目の前の試験を乗り越えることが目的。
そのため、定期試験は一夜漬けで乗り切ると言ったこともありました。そんな付け焼き刃の知識では当然受験につながらず、これが後々に響いてきます。
校内では半分より上と下を行ったり来たりしているような成績でした。通っていた学校が県内トップクラスの進学校であったこともあり、校外の模試では偏差値60〜65ぐらいありましたが、客観的に見て現役で京大を目指すには厳しい学力です。
当の本人は、「今まで勉強してなかったんだから、ここから頑張れば普通に受かるっしょ」と楽観視していましたが。
そろそろ勉強始めるかー 高2 冬〜高3 春
いよいよ受験まで1年ほどとなります。「高3の0学期」と言われることもあるこの時期、「さすがにそろそろ勉強頑張るか〜」と思い始めました。まずは数学と英語が大事だと考え、この2教科の基礎固めからスタート。
数学は、典型問題の知識に抜け漏れがあると感じていたので、「自分の苦手な単元and京大でよく出る単元」という観点で絞り込みし、「整数」「積分」「ベクトル」「確率」などを主にやりました。
英語は、「まずは単語!」ということで、学校で配られた単語帳を完璧にすることから始めました。使ったのは、『速読英単語(必修編)』。文法はもともとある程度定着してて、長文を読むことにも慣れていたので、単語を覚えてからは共テ模試などの点が安定するようになりました。
部活引退で勉強時間増加、夏休みで息切れ? 高3 夏
部活を引退してから、部活していた時間をほぼそのまま勉強時間にあてたので、1日の勉強時間は増加。新たに増やした勉強時間は主に物理と化学でした。
物理は、ある程度基礎が定着していたので、既習分野の入試対策と未習分野の予習を進めました。化学は結構サボっていたので、基本的なことに立ち返りました。
冬から英語と数学を多少やっていたので、その分理科に時間を回せたのはよかったです。現役生はどうしても理科や社会が遅れがちなので、そこに力を注ぐためにも、受験生になる前から英語や数学の学力を固めておくといいですね。
学校祭ロスで虚無、気づけば秋の模試の直前に 高3 秋
8月後半から9月前半は文化祭や体育祭の練習や準備で忙しく、英語や数学を中心に最低限勉強するといった感じでした。行事後も喪失感で1週間くらいあまり捗らず、最低限の勉強しかできなかったです。
しかし、「毎日一番最初にやる勉強を決める」「日々のやることをルーティン化する」といった工夫のおかげで、全然勉強できない日はあまりありませんでした。
10月に入ってからペースを上げましたが、あっという間に第2回の京大模試の時期になってしまいました。結果的に、夏の模試から比べて、成績や判定はほとんど変わりませんでした。
しかし、この後で詳しく書きますが、冬以降一気に成績が伸びます。後から振り返ると、秋の時点での勉強が冬の追い上げにつながっていたように思います。
勉強したことがすぐに成績に反映され、勉強量に比例するように成績が伸びるわけではありません。しかし、正しい方法で努力していれば、長い目で見たときに結果は出ます。
2次対策&共テ世界史に全力を注ぐ 高3 冬〜共テ
12月に入り、周りは共テ対策に特化という時期でしたが、僕は世界史のみ対策し、他の時間は2次試験の対策をしていました。
京大総人理系は、共テ100点・2次試験700点という配点であり、しかも、共テ100点は世界史のみだったからです。共テの他科目は、1次選抜(足切り)のみにしか使われません。
過去の模試の成績的にも共テの形式への苦手意識はなく、京大の2次試験を解けるようなレベルに達すれば、共テもある程度はできるはずだと判断しました。その分世界史には時間を割き、過去問を15年分ほど解きましたが、他科目は出題形式に慣れる程度の対策しかしませんでした。
むしろ、「周りの人が共テの勉強をしている間に2次試験の勉強をして追い上げる」「この時期も2次試験の勉強をしていないと追いつけないだろう」と考え、理科や数学の応用問題や京大の過去問を進めました。
共テの配点が低い大学を受ける場合や、すでに共テ模試などである程度点を取れている人には参考になるかもしれません。不安から周りのやっていることが気になりがちですが、自分に必要なことをやりましょう。
戦略勝ちの共テ、京大総人単願へ突き進む 直前期
共テ対策を世界史のみに特化するという戦略は成功を収め、世界史で満点を取り、現状学部内1位となってしまいました。
2次試験の配点比率が圧倒的に高いので、この順位に実質的に大きな意味はないのですが、自分の戦略がうまく行ったことは自信となりました。
もともと、京大総人に受からなけければ浪人するというつもりだったのですが、共テを終えて改めてその決意を固め、私立や中期後期の出願はしませんでした。落ちたら浪人する、総人合格にフォーカスするという2点が明確だったからこそ、迷いなく判断できました。
直前期は過去問中心の勉強でした。しかし、やみくもに解いているだけでは成績は伸びません。不安な点や過去問を解く中で見つかった苦手な点を、過去使っていた教材で復習するようにしていました。
合格発表、浪人決定
結果は、不合格でした。数学があと1題解けていれば受かったぐらいの差でした。超僅差というわけではありませんが、模試D判定常連だったことを考えれば、上出来なのかもしれません。
短い期間で成績をしっかり伸ばせたことは、この後浪人を迎えるにあたってよかったです。自分の勉強方法への自信にもなりましたし、大半の現役生より学力のある状態で浪人を始められました。
不合格体験記となってしまいましたが、成績を上げるという観点では役に立つことを紹介できるかと思います。
ここからは、成績を飛躍的に伸ばすことに貢献した受験戦略や勉強法を紹介します。ぜひ参考にしてください。その後で不合格の原因についても書きます。こちらはぜひ反面教師にしてください。
成績の劇的アップに貢献した受験戦略
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出るとこ狙いの1点集中!捨てる勇気を持つ
受験について、楽観的な面もあった一方で、100回受けて100回受かるような学力を今から目指すのは無理という自覚もありました。今から満遍なくやろうとしても、すべてが中途半端になってしまうと感じていたのです。
そこで、出る可能性の低い分野、かけた時間に対して成績の伸びが期待できない分野、配点的に重要でない分野は思い切って諦めました。
たとえば、共通テスト。総人では世界史のみが使われ、他の科目は足切り突破のための科目なので、世界史以外の共通テストの勉強をほぼしませんでした。先ほども書きましたが、この判断は正解でした。共テ世界史と2次試験対策に注力したことで、学力を大きく伸ばせました。
また、2次試験も出そうな分野を重点的に対策しました。京大入試の場合だと、数学では、「確率」「整数」などほぼ毎年出題される分野があります。
短い期間で成績を上げるためには、点数に直結しやすい分野から勉強しましょう。
受験はマラソン!8割の力を出し続ける
僕は、常に8割ぐらいの力で安定して勉強し続けることを大切にしていました。やるときはしっかりやるけど休憩時間も取り、1日単位で見たときに、体力的にも精神的にも追い込みすぎないようにしていました。
受験は長期戦です。2、3日の間10割の力で自分を追い込んで勉強したとしても、次の日消耗して休んでしまえば、トータルで考えて8割でやり続ける方が勉強量も増えますよね。一定の力を出し続ける方が、リズムができて慣れてくるので、心身の消耗も少ないです。
また、慣れてきたら、「今まで8割の力でやっていたことが6割の力でこなせるようになり、残り2割分増やせる」といった具合で、より勉強できるでしょう。
さらに、普段から8割ぐらいの力でやり続けていれば、「どうしても今日中にこれを終わらせたい」「次の模試までに〇〇をやりたい」など、いざというときにペースを上げられます。
これらはマラソンに例えるとわかりやすいと思います。全力で走る→休むのセットを繰り返すより、少しスピードを落として一定のリズムで走り続ける方が早いです。ペースが安定すれば楽に走れるようになり、勝負どころではペースを上げられます。
この考え方を実現すれば、「勉強に対する負荷が下がる→もっと勉強できるようになる→それに慣れてくる→…」という好循環が生まれてきます。
毎回E判定な受験生を合格あと1歩まで引き上げた勉強法
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日々の勉強をルーティン化!習慣の力でハードルを下げる
ある程度、この時間帯にはこの勉強をすると、具体的に決めてしまうのがオススメです。徐々に身体が慣れてきて、楽にこなせるようになります。また、毎日の計画の手間や、次はどの勉強をやろうかと考えることが減るので、時間的なメリットもあります。
特にオススメなのは、毎日1番最初にやる勉強を固定するという方法です。毎朝起きたら、トイレに行く、歯磨きをするなど、いつもやることが決まっていて自然とリズムが出てくる人も多いでしょう。
それと同様に、その日一番最初に勉強することを決めておくのです。僕は好きな教科、教材を最初にやるようにしていました。好きな科目なので勉強への心理的ハードルが下がり、そこで気分がのって、他の勉強もスムーズに進められました。
勉強の合間には適切な休憩を!休憩も勉強の一部
一定時間勉強したら休憩をするようにしていました。
休憩はほぼ取らず、食事や風呂の時間も勉強にあてたり、睡眠時間を削ったりして、1日15時間くらい勉強するような人がいます。
自分も浪人期に実際に試してみましたが、勉強そのものよりも、長時間やることが目的となってしまいました。また、次の日に反動が出て、勉強時間が減ってしまいました。
休憩は悪いものと考えるのはやめましょう。適切な休憩を取ることには多くのメリットがあります。
休憩のメリット
- 集中力を保てる
- 学んだことが定着しやすくなる
- 肉体的な疲労が取れる
適切な休憩とは具体的に何なのか。僕が特に意識していたのは、スマホをいじらないことです。スマホをいじると脳や目の疲労がとれず、休憩の意味がなくなってしまいます。また、ついSNSなどを見て脱線してしまいます。
休憩中には、以下のようなことをしていました。
- 目の体操をする
- 歩き回る
- ストレッチや筋トレをする
- 仮眠を取る
- 音楽を聴く
休憩は、短い場合25分に1回、長くても90分に1回は取るようにしていました。
やったことを記録!記録にはたくさんのメリットがある
僕は勉強するときにさまざまなことを記録していました。勉強時間や、使った教材などに加え、問題を解いてる際の疑問点や気になったことは参考書にどんどん書き込んでいました。
記録を取ることには多くのメリットがあります。
まずは、自分の勉強が可視化されることです。これによって、達成感が得られたり、進捗を客観視できます。何をいつやると捗るかや休憩の最適な時間がわかり、計画の精度が上がるといった効果もありました。
また、参考書に疑問点などを書き込んでおくことで復習がしやすくなったり、自分の成長を実感できます。勉強を始めるときに、前回何をどこまでやっていたかや、何でつまずいていたかがすぐにわかり便利です。
不合格の原因はなんだったのか?
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勉強始めるのが遅かった
最大の原因はこれでしょう。
高3以前からもっとちゃんと勉強していれば、余裕を持てたはずです。時間が足りない中で無理に間に合わせようとしたために、分野ごとで理解度のばらつきができたり、基礎の理解が不十分な部分があったと感じています。
高校1年生や2年生のうちから勉強を継続しておくと、後から楽になると思います。時間がない人は、特定の教科だけに絞って取り組むなどもいいかもしれません。
好きな科目や得意な科目が継続しやすくてオススメですが、特にこれといったものがない人は、英語をやりましょう。英語は文系でも理系でも必要となりますし、早い時期で英語に目処が立てば、他の科目に時間をかけやすいからです。
難関大学を受ける場合、数学は難易度が上がりますし、現役生の場合、理科や社会は全分野学ぶのが遅くなりがちです。この状況で英語にも長時間かけるのは難しいでしょう。
僕自身、英語に関しては、「単語の暗記と解釈の勉強をすれば京大の英文も読める」といった状況だったため、数学や理科に時間を割けました。
1つでも得意な科目があれば、その分他の科目に使える時間も増やせます。試験においても得意科目があると、「この科目で点が稼げる」となり、精神的な余裕につながります。
模試などの見直しをしなかった
「間に合わない」という焦りから、参考書を先に進めること、過去問を解き進めることを優先し、過去の模試などの復習を後回しにしていました。
受験直前に見直したものも一部ありましたが、直前に見直すと時間が足りませんでしたし、「もっと早く見直しておけばよかった」「ここ今もできない、ヤバい」などとなり精神的にもマイナスの効果が大きかったです。
模試は、終わった直後や次の日など、何を間違えたか、どこでつまずいたのかの記憶が鮮明なうちに見直しをしましょう。そして、間違えた部分、間違えた原因は記録しておくと良いです。すぐ見返せるように写真を取っておくなどするのもおすすめです。
浪人期は、上に書いたような方法でしっかり模試の復習をし、とても効果がありました。過去の未復習の模試が溜まってる人は、苦手科目や志望大学の配点が高い科目などからぜひ復習してみましょう。
リラックスしすぎた
受験勉強の期間中、体調を崩したり、精神的に病んだりすることなく過ごせましたが、逆にリラックスしすぎていたのかなとも思いました。
先ほど、「8割の力を出し続ける」という話でマラソンを例にして説明しましたが、その例えを用いるならば、ペースを上げるのが遅すぎましたね。そのため、完走するのにもう1年かかってしまいました。
自分の心身の健康と、受験というゴールに向けて追い込むことのバランスは難しいのです。結果論かもしれませんが、もう少し追い込む側に寄せても良かったのかなと思います。
浪人へ向けて
浪人&文転の決断
落ちたら浪人という覚悟はありましたが、かなり落ち込みましたし、気持ちを切り替えるのに時間がかかりました。
京大総人に入りたいという思いは強かったので志望は変えませんでした。しかし、浪人開始と同時に文転することに決めました。総人は文系理系両方から受けられるのです。
ゴールは変えないけどルートを変えるような不思議な文転であり、周りから驚かれましたが、自分の中で迷いはほとんどありませんでした。
なぜ文転したのか、現役時の反省を活かしどのように勉強したのかについては、後編で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
浪人&文転について語った後編はこちらから
後編リンク
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